コラム

「初めて『人』を伝えたいと思った瞬間」
ヒトデのこと

目次

「人で見つける私の仕事」のきっかけ地域おこし協力隊一緒に悩んでくれる人がいるのが、強み条件ではなく、本気度で選ばれる価値観の外側にいる人も、幸せだよ。と伝える

「人で見つける私の仕事」のきっかけ

職種でも、お給料でも、雇用条件でもない。一緒に働く「人」で働く場所を決める。ヒトデの中心には、そんな価値観がある。「この人と一緒に働いてみたい」「この人のように暮らしてみたい」働く人に共感する、すなわち、働く人が創り上げる企業の文化に共感のあるマッチングは、どちらにとっても、ミスマッチの少ない良質な出会いになりやすい。全く同じ仕事でも、誰とやるかで気持ちが全然違う。だったら、少しでも楽しく、自分らしく働ける仲間と仕事したい。ヒトデは、こうした出会いを創造するため、会社で働く「人」を丁寧に伝えている。「人で見つける私の仕事」というコンセプトはどこから生まれたのか。今回はヒトデの最初のきっかけについてまとめたい。

地域おこし協力隊

「ずずずっ!」ヒトデの発想は、うどんをすすりながら生まれた。私、秋吉直樹は平成27年8月から香川県の地域おこし協力隊として仕事している。全国では珍しい、県庁に所属する地域おこし協力隊だ。地域おこし協力隊コーディネーターという肩書きをいただき、地域おこし協力隊をサポートする役割を担っている。地域おこし協力隊コーディネーターとしての役割は大きく分けて3つ。接着剤的役割と補強材的役割、受入体制サポート。

(※地域おこし協力隊とは:総務省資料より抜粋:http://www.soumu.go.jp/main_content/000405085.pdf

都市地域から過疎地域等の条件不利地域に住⺠票を移動し、⽣活の拠点を移した者を、地⽅公共団体が「地域おこし 協⼒隊員」として委嘱。隊員は、⼀定期間、地域に居住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等の地域おこしの⽀援や、 農林⽔産業への従事、住⺠の⽣活⽀援などの「地域協⼒活動」を⾏いながら、その地域への定住・定着を図る取組。

接着剤的役割は、読んで字のごとく、地域おこし協力隊と行政職員、地域住民の3者をくっつける役割だ。地域おこし協力隊事業が上手く機能するためには、3者の連携は欠かせない。そのために、それぞれが一堂に会する機会を設けたり、ウェブやフリーペーパー等のメディアを作って、お互いの理解を促す取り組みを行った。うまく連携するためには、やっぱりお互いを知らないと。それぞれの立場を超えて、理解が深まる取り組みに注力した。補強剤的役割は、地域おこしに必要な知識・スキルを補う取り組み。行政予算やコミュニケーションについての研修を行い、それぞれの隊員が地域の中でスムーズに活動できるサポートだ。協力隊は、「地域おこし」という立派な名前が付いているが、地域おこしのプロフェッショナルではない。それまでのキャリアもバラバラで、むしろ、地域と一緒に仕事するのは初めてという、地域おこし素人であることが多い。常識にとらわれない発想ができるという意味では、知らないことはプラスに働くが、やはり一定のことは勉強しておきたい。協力隊として、最低限知っておくべきことは知っておこう、という内容だ。

一緒に悩んでくれる人がいるのが、強み

ヒトデの発想に繋がったのが、3つ目の受入体制サポート。「なぜ協力隊を導入するの?」を徹底的に考える取り組みだ。コーディネーターにとって、もっとも重要な取り組み。地域おこし協力隊の導入を希望する地域に伺って、地域おこし協力隊を受け入れるための体制づくりを行うというもの。具体的には、受入を希望する地域に伺って、行政職員、地域住民と共に、地域おこし協力隊の運用計画等を整備していく。受入側とのミスマッチによる問題が散見される地域おこし協力隊において、事前にどのような心構えを持って地域おこし協力隊を受け入れるのかを考えることはとても大切。平成28年度、香川県西部の地域で、このサポートを行った。そのなかで、もっとも工夫が必要だったのが、地域おこし協力隊の求人。巷ではブラック自治体の存在も指摘される中で、「自分だけはブラック自治体に入りたくない」と、誰もが厳しい目で各自治体の募集要項をチェックしていた。そんな中での求人は、一筋縄ではいかない。まして、知名度も高くない、お給料も全国とほぼ同額、業務内容も「ここでなくては」というものとは言い難い地域での求人だ。普通に募集していては、差別化は図れない。この地域を選んでもらうためにどんな工夫が必要だろうと、考えをめぐらせている時、一緒になって真剣に悩んでいる行政職員、地域住民の姿に気がついた。「こんなに真剣になってくれる人と、一緒に仕事したら絶対楽しいだろうなぁ。きっと協力隊だって、そう思ってくれるはず」初めて「人」を伝えたいと思った瞬間だった。そこから「人」を伝えるPRをスタートさせる。

条件ではなく、本気度で選ばれる

具体的に行ったのは、協力隊導入に向けた現場視察や会議の様子を丁寧にまとめ、HPにアップするというもの。一見シンプルだが、その中でどんな人たちがどんな想いで協力隊のプロジェクトに関わっているかが滲み出るようにしたのだ。そうした発信を始めると、かなりの反応があった。出来上がった募集情報が出回ることはあっても、未完成の募集情報が出回ることはこれまでほとんどなかった。「この内容で募集します」ではなく、「今、募集内容を一生懸命決めてます」という情報発信に、「楽しみ!!」「いよいようちの地域でも協力隊募集があるのか!」と、たくさんの人が反応してくださった。募集条件を伝えることよりも、たくさんの人が真剣になって準備を進めている本気度を伝えることに注力したのだ。こうした「人」を伝えたPRは、すぐに結果に繋がる。実際に募集を始めると10名の方から申し込みがあり、その中でも優秀な2名を採用することができたのだ。実はこの地域、前年度にも協力隊の募集をしていたが応募は0。まさに届け方の大切さを痛感した。それと同時に、「人」を伝えることが求人に効果があると、手応えを感じる出来事だった。この出来事がまさに「人で見つける私の仕事」という発想の原点。

価値観の外側にいる人も、幸せだよ。と伝える

この頃から「人」を伝えることを通じて、地域の雇用に貢献できないかと考えるようになっていた。全国的な人材不足が指摘される中で、地方の中小企業のそれは深刻だ。その理由は様々あるのだろうが、私には協力隊を募集しても応募がない地域の状況に似ていると思えた。東京・大阪と比較すると、知名度は低く、お給料も高くない、その場所でないとできない職種もほとんどない。「仕事は職種・お給料・条件で決めるもの」大手就職・転職サイトが創ってきたこうした価値観のうえでは、地方の中小企業が選ばれないのは必然だった。今までの価値観で仕事を決めようとすると、その外側にある地方の中小企業は選ばれない。でも、そこで働いている人たちがみんな不幸なのかというと、全くそうではない。むしろその逆で、みんな生き生きと働いている。一人一人の価値観を持って自分らしい生き方を確立している。そのことに気がついた時、「こんなにすてきに生きている『人』を伝えたい」と強く思うようになっていた。「人」を伝えることで「働く」という価値観の幅を拡げる。そうした価値観の広がりが、日本各地で生き生きと働く人を増やし、日本をもっと彩り豊かにする。たいそうだが、そんなことまで可能ではないかと思っている。おぼろげだが、確信に近い。身体の芯がパチパチと燃えている感覚すらある。まだまだスタートしたばかりのヒトデだが、こうした志を持って地道に歩みを進めていきたい。

(2017/9/8 秋吉直樹)