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「男の人に言うと、たいてい、ひかれます」
将基酪農 岡夏未さん
【目次】
「よみちゃま」と「もぐ様」/一目惚れ/まだ内緒にしてます/コミュニケーションが咲く/一緒に乗り切る/悩んでいい/自分が楽しみになる仕事/「牛さん、あなたはどこで働きたいですか?」/ヒトコト/求人情報
「よみちゃま」と「もぐ様」
「あの無害そうな優しい顔がめっちゃくちゃ可愛いんですよ」将基酪農で働く岡さんが嬉しそうに話すのは、牛について…ではなく、ペットのヘビについてだ。ボールパイソンというニシキヘビの仲間らしい。私にとっては見るのもためらってしまうヘビを、「よみちゃま」(本名「よみ」)と呼びながら飼っているという岡さんに、頼もしさすら感じていた。無類の爬虫類好き。まさにその言葉通り。岡さんは、ヘビの他にもオオアオジタトカゲも飼っている。トカゲには「もぐ」と名付けたが、普段は「もぐ様」と呼んでいるという。「様」が付くのは、可愛過ぎるのが原因だそうだ。韓流スターに「○○様」とつける、その感覚に近いのだろうか。爬虫類トークにあっけにとられながらも、ひとつのことが頭に浮かんでいた。ここまで愛されていると、動物もきっと幸せだろうなぁ。人と同じように、動物だって、誰と一緒に過ごすかで幸せかどうかが変わるはず。「よみちゃま」も「もぐ様」も、きっと幸せに違いない。爬虫類と同じくらい、いつも岡さんが愛情一杯に接している牛たちもきっとそうだ。楽しそうに話す岡さんを見て、自然とそんな事を考えていた。
一目惚れ
台湾へ行くのかな、それとも沖縄かな。取材に向かう途中、大きな飛行機が目の前を通過した。岡さんが働く将基酪農は、高松空港からほど近い高松市香川町にある。県内でも有名な塩江温泉には車で約20分、高松市内へも約30分と、どこへ行くにも便利な地域だ。
昭和40年に創業した将基酪農は今年で52年目を迎える。牛乳やチーズといった、私たちの生活には欠かせない乳製品づくりを支えてきた会社だ。750頭の乳牛が暮らす牛舎はとっても広々。広いなぁ。観光牧場しか行ったことが無かった私は、本格的な酪農場を前に思わず声を漏らしていた。それもそのはず、その規模は四国で最大級だ。
岡さんは平成28年に将基酪農に入社した。社会人として、そして、将基酪農の一員として、2度目の夏を迎えようとしていた。親牛チームに配属している岡さんは、餌やりから搾乳、助産など、親牛に関する業務全般を担当している。会社に入る前は、牛を触った事も見た事もなかったという。酪農を勉強していたわけでもない。そんな岡さんと将基酪農の出会いは、地元で開催されていた小さな合同説明会だった。「動物が好きだったので、話だけでも聞いてみようと思って、何気なくブースに行ったんです。その時に会社の人が丁寧に説明してくれて、会社見学に行くことにしたんですよね。会社見学の時に初めて牛を見て『あ、牛って可愛いなぁ』って思ったんですよ」最後にぽろっと「そこからですね」と、岡さんは付け加えた。まさにそこから、大好きな牛たちに囲まれた新生活がスタートしたのだ。
まだ内緒にしてます
「全部が可愛いんです」スイッチが入る音がした。岡さんに牛のどこが好きなんですか、と聞いた時だ。目を細めて、口角をくいっとあげて、そして、可愛い牛達を思い浮かべるように話し始めた。「牛って、ご飯食べてる時も可愛いんです。しかも、それぞれ違うんですよ。普通にもそもそ食べてる子もいれば、口から溢れるくらい食べてる子もいる。食べ終わって、みんなが休憩している時の表情とかもみんな違うんですけど、みんな可愛いんです。可愛過ぎて意地悪しちゃうんですよ。(笑)牛って、反芻してる時にほっぺに餌が溜まるんですけど、そういう時に横からつんつんすると、『やめてぇ』ってするんですが、それがもうたまりません」牛を見ているとニヤニヤしちゃうんですよ、と話す岡さんに、1つ訂正を入れたくなった。岡さん、牛を想像してるだけで充分ニヤニヤしてますよ。
岡さんがニヤニヤするものがもう1つ。冒頭で紹介した爬虫類だ。ポチっと、またスイッチの入る音。「餌をあげようとすると、壁に張り付いて私の方を見てくるんですけど、その顔とかもう最高です。正面から見た時とか、めちゃめちゃ可愛いんですよ」しかしこのスイッチ、岡さんなりに入れ時は考えているそうだ。「ヘビとかトカゲとか、飼っていると話すと結構ひかれるんですよ。特に男性にはひかれます。(笑)実は、今年会社に入ってきた方が爬虫類好きみたいなんですよ。嬉しくてちょっとだけ爬虫類話はしたんですけど、家で飼ってるってことはまだ内緒にしてますね。笑」小さい頃から好きなものには熱中するタイプだったらしい。そこには、他人からどう思われるとか、女の子らしいかどうかとか、そういう基準はない。自分が好きなものは好き。岡さんはまっすぐな人だ。
コミュニケーションが咲く
岡さんが牛に熱中するきっかけを作った立役者にもお話を伺った。管理部の三城さん。将基酪農では人事や経理などの事務を担当している。家では2児のママだ。そしてこの三城さんが、岡さんが将基酪農と出会ったあの合同説明会で、担当者として丁寧に説明をした本人である。「あ、覚えてくれてたんや。嬉しいです。実はあの時、私にとっても2回目くらいの説明会だったんです。それで岡さんて、すごくしっかりしてるでしょ、私の方が緊張してたんですよ」そういって人懐っこく笑った。そのなんだかホッとする笑顔に、当時の岡さんの気持ちが少し分かったような気がした。なるほど、こんな風に笑う社員さんがいる会社、実際に一度見てみたい。
「現場のモチベーションをあげるために、自分に出来る事はないかなぁって考えてますね」現場と経営者をつなぐのが自分の役目だと話す三城さんは、社員同士のコミュニケーションのきっかけ作りに取り組んでいる。社内報や朝礼、BBQなど、実にたくさんのことを実施しているが、驚くのはそのほとんどが、三城さん自らが企画提案したものだということだ。「社長からも会社の考えを現場に伝えて欲しいと言われてますし、ある程度任せてもらってるからには、自分の出来ることをしっかりやりたいなぁという気持ちがありますね。社長たちも、私の意見をちゃんと聞いてくれるので嬉しいです」任せてもらえるから、自分たちで考えて行動できる。それがやりがいにつながる。当たり前のようだが、実践できている会社はそう多くはないのではないか。
三城さんは、最後に嬉しそうに最近の取り組みを教えてくれた。「ゴーヤを植えたんですよ、グリーンカーテンとして。あえて水やり当番とか決めなかったんです。そしたら、自然と気付いた人が水をあげてれるようになったんです」さっそく見に行くと、一輪だけ花開いていた。今年も大きくなったな。そう言って笑う社員さんたちが目に浮かぶ。また1つ、社員同士の笑顔のきっかけができそうだ。
一緒に乗り切る
そんな社員同士のコミュニケーションがあるから、楽しく仕事に取り組めている人もいる。岡さんの同期の矢野さんだ。自分の事を人見知りだと話す矢野さんは、何でも言い合える雰囲気に助けられているという。「分からない事は何でも聞こうと思って、自分から話しかけることを意識してます。先輩も優しく教えてくれるので、働きやすいですよ」高校時代に牛の勉強をしていたという矢野さん。大学では別の道を進んだが、やっぱり動物に関わる仕事がしたいと将基酪農に入社した。もちろん矢野さんも牛が大好きだ。
「岡さんは…めっちゃ明るい人ですね。よく笑ってます。(笑)いいなぁと思います。岡さんがいると、場が明るくなるんですよ。あと、よく牛に話しかけてニヤニヤしてます。笑」分からない事だらけだった1年目。よく2人で相談していたという。酪農は、社会人1年目の女の子にとって決して楽な仕事ではないだろう。それでも乗り切って、「この仕事が好きです」と言える2人の姿は、信頼できる仲間がどれほど大切かを教えてくれているようだった。
悩んでいい
「そうですねぇ、感情豊かですよ。嬉しい時は凄い喜んでますし、なんか不満がある時は顔に出てますし、分かりやすいですね。笑」そう言って笑うのは、岡さんが所属する親牛チームのリーダー、武田さんだ。武田さんは、岡さんが悩んでいる時にすぐには声をかけないという。「自分の中でモヤモヤしている時期は、自分で考えて乗り越えていってほしいんです。すぐに答えが出るのって面白くないじゃないですか」しんどいと思う時期も多かったと語る武田さんだが、それでも10年以上続けてこれたのは酪農が好きだったからという。きっと武田さん自身も、自分で考え抜いて、自分の気持ちに気付けたんだろう。「悩んでいいぞ」後輩思いのベテランの顔には、そう書いてあった。
自分が楽しみになる仕事
「何も無い日がないですからね」岡さんにあえて、酪農の大変なことを伺った。「毎日何かしら起こって、何かしらする事があるんです。平和だなぁと思ってたら、急に治療する必要が出てきたりします。頭数がいる分、大変ですよね。でも、まぁ、いろんなバリエーションの経験ができますから、それが楽しかったりもするんですけどね」生き物を相手に仕事する大変さは、想像以上だろう。でも、それ以上にやりがいもある。そして、自分自身の成長にもつながる。牛のちょっとした変化にも気付けるようになりたいと話す岡さんは、 将来の自分をどこか楽しみにしているようにも見えた。
「牛さん、あなたはどこで働きたいですか?」
最後に岡さんにどうしても聞きたい事があった。好きなことを仕事にするってどうですか。うーん…と少し考えてから、すっと顔をあげ、いつもの笑顔で話してくれた。「趣味を仕事にするか、それとも趣味のまま終わらせるか、考えたことがあったんです。それで結局好きなことを仕事にしようと思いました。だって、好きなことでお金がもらえるって、ラッキーじゃないですか。笑」直球だ。自分が好きなことを思いっきりしたい。そんなシンプルで力強い想いを感じる。牛もラッキーだろうなぁ、自分たちのことをこんなに好きな人と一緒に仕事できるんなんて。
英語と日本語で会話していても、耳につけた翻訳機が、お互いの言語に自動翻訳してくれる。今はそんな時代だ。いずれくるんじゃないかなぁと思う、動物とも会話できる時代が。そうなったらぜひ牛にインタビューしてみたい。「私たち牛だって、一緒に働く人で仕事場を決めたいですよ」そう言ってくれたら、ぜひこの人を紹介しよう。優しく牛に話しかける岡さんを見て、そんな妄想をしていた。
(2017/5/30 秋吉直樹)
ヒトコト
人事担当の三城さんからのヒトコト
障がい者
仕事柄、体力が必要なので、障害によっては厳しい場合もありますが、障がい者だから受け入れしないということはありません。その人、一人一人を見て、判断をさせていただきます。
LGBT
LGBTの方はまだいませんが、そこで人を判断することはしません。仕事ぶりや、やる気で判断させていただきます。仕事も男女で分かれているということは特にありませんし、男女での優劣もほとんどありません。
外国人
実習生が7名来てくれています。昔は途中で辞めてしまう子もいましたが、今はほとんどいません。今ではいないと困る存在ですね。シンプルな作業を担当していただいているので、特に職務上も問題なく働けていると思います。先日は、カンボジアの子に料理を振る舞ってもらう社内イベントも実施しました。
65歳以上
4名います。定年後に来てくれている方ばかりです。管理職を経験されている方もいて、お仕事を任せられる方々が多いですね。現場に細かく目が届かない時は、彼らで話し合って決めてくれることもあるので、助かってます。それぞれの得意分野を生かして、できることをやってくれてると思います。
子育て後の復職者
私自身が子育て後に復帰した1人ですね。子育てが落ち着いた時にパートで雇用していただいて、今は正社員として働かせていただいてます。復職に向けて、まずは短い時間からの雇用も相談に乗ります。
ブランクからの復職者
大学時代、病気が原因で大学の卒業が遅れてしまった人が1人いますね。それでも全然大丈夫です。引きこもりの方でも、社会復帰したいという気持ちがあれば、全く問題ないですね。
有限会社将基酪農
所在地
〒761-1708 香川県高松市香川町安原下第一号184番
募集職種
畜産管理(乳牛の管理・飼育)
雇用形態
①正社員②パート・アルバイト
給与
①
高卒190,000円~
短大・専門卒194,000円~
大卒200,000円~
※昇給実績あり(本人の能力と会社の業績による)
※賞与実績あり(本人の能力と会社の業績による)
②
時給1,000円~
福利厚生
通勤交通費
2キロを超える場合、社内規定により距離に応じて支給
①実費支給(15,000円/月まで)
②実費支給(500円/日まで)
社会保険
①雇用保険・健康保険・厚生年金・労災保険
②労働条件に応じて加入
以下①のみ
住宅手当 10,000~20,000円/月(近隣家賃相場:40,000円/月)
家族手当 配偶者8,000円/月、子5,000円/月
機械の農講習制度あり(フォークリフト等)
退職金制度あり(2年目より中退共に加入し、3年目より支給)
仕事内容
乳牛の管理および飼育に関する業務全般
・搾乳作業
・乳牛ごとの搾乳の量や健康状態の管理
・乳牛ごとの個体管理データのパソコン入力
・飼料の配合や餌やり
・牛舎およびその周辺の清掃 など
勤務地
鮎滝ファーム 〒761-1708 香川県高松市香川町安原下第一号184番
勤務時間
①5:00~22:00のうち、9時間
シフト制
例
A 5:00~15:00(60分休憩)
B 8:00~12:00、16:00~21:00
C 12:00~22:00(60分休憩)
※状況に応じて変わることがあります。
②1日4時間~
※曜日・時間は応相談
休日休暇
①週休1日、GW・夏期・年末年始(各2日間ずつ休暇あり)
有給休暇取得制度あり(正社員は入社時に付与)
②勤務のない日
求める人
動物の好きな方
募集期間
随時
採用予定人数
①、②とも2名
選考プロセス
まずは下のフォームからお問い合わせください▶︎電話・メールで連絡▶︎(見学)▶︎面接
その他
乳牛750頭をトンネル換気牛舎においてパーラー方式で牛乳を生産、加えて仔牛を100頭哺育しています。