コラム

「学校へ行くか行かないかではなくて、別の生き方があるんだってことを自分たちで示したい」
hito.toco 宮武将大さん

『「働く」の幅を拡げる』

人は常に誰かと働いています。人は不思議なもので、同じ仕事であっても、ともに働く人によって幸せな気持ちにもなるし、暗い気持ちにもなります。だから、少しだけ顔を上げて、隣にいる誰かを見つめ、どんな人であるかを知りたい。誰かを知るということが、「働く」という価値観の幅を、少しだけ拡げてくれます。そして、その拡がりが、誰もが自分らしく、活き活きと働ける社会を創っていくのだと信じています。

こんな想いから動き出したイベント「ヒトデTALK」。第二回目は『「ひきこもり」と「働く」を考える』と題して、障がい者やひきこもりなど、様々な「個性」ある社員を積極雇用している(株)サニーサイド代表取締役の多田さん、ひきこもりの相談事業を始め、ご家族、支援者、企業向けの教育事業や若者のコミュニティ事業などに取り組む(一社)hito.toco代表理事の宮武さんをお招きし、人材不足時代に打ち勝つための「個性ある人材の活用」のリアルについて、トークセッションします。それに先立って、hito.toco 宮武さんに、日頃の活動や今回のヒトデTALKに対する想いを伺いました。

一般社団法人hito.toco 代表理事 宮武将大氏
自身8年間のひきこもり経験を活かして、ひきこもりの相談事業を始め、ご家族、支援者、企業向けの講演・教育事業や若者のコミュニティ事業などに取り組む。平成30年4月には、就労移行支援事業所を開設する等、精力的に活動の幅を拡げている。

-まず、日頃のhito.tocoの取り組みについて教えてください。

今まではひきこもりの方の個別相談をメインでやってきました。元々、当事者のソーシャルアクションを実現したいと思ってhito.tocoをスタートしたんです。当事者発信で社会を動かすアクションを起こしたいと考えてました。最初は、当事者だけの当事者集団を作ったんですよ。そこには、元引きこもり、不登校、LGBTとか色んな人がいましたね。当事者だからこそできる社会活動があるんじゃないかと思って、始めたのがきっかけでした。今は、個別相談に集中して います。ご家族かご本人さんからのご相談をいただいて、家庭訪問させていただいてます。そこから本人の希望に合わせた、復学や就労のサポートですね。

-hito.tocoは、まさに当事者発信で様々な取り組みを行ってきたんですね。2018年4月には、就労移行事業をスタートするそうですが、そう決意したきっかけを教えてください。

多くの人のゴールが、「働く」という所にあると気がついたからです。ひきこもり界隈では「働く」っていう言葉は、NGワードっていう風潮があるんですよ。「なんでみんな働かなきゃいけないの?」っていう価値観がありますから。それを全く否定するつもりはありません。ですが、当事者のみなさんと話をしていると、それでも最後は「自分で稼ぎたい」とか、「親が死んでしまった後に生活していくためには働かないと」ってことを、ちゃんと考えてるってことに気づいたんです。それがきっかけですね。そこから「働く」ということに関して、何ができるか、何に興味があるかってことを紐解いていくことを始めています。次の4月にはしっかりと事業化して、継続的な仕組みを作りたいと思います。

-なるほど。すでに少しずつ取り組んでこられたんですね。取り組む中で見えてきた課題や難しさなどはありますか。

家族、本人、企業の速度感を合わせるのが難しいですね。それぞれが持っている「働く」のイメージが違うんです。家族にとっては、「正社員として安定して通う」っていうのが働くのイメージなんですけど、本人にとってそれが違う場合もある。いきなり正社員じゃなくても、アルバイトや短時間、自宅勤務とか、働き方って色々あると思うんですけど、その価値観を擦り合せるのが大変ですね。本人と家族の望んでいることが違うんですよ。企業に関しては、もう少し力を持っておいて欲しいなぁと思いますね。ひきこもりの方の中には、どうしても仕事を覚えるスピードが遅い人がいるんですが、そうした時に、待っていられない企業さんが多いのが現状です。その場合、すぐに「宮武さん、何とかしてください」と連絡が来るのですが、本来であれば社内でしっかりと向き合って解決してもらいたいです。いつまでも私が関わり続ける「支援ありき」の姿が、理想だとは思っていないので。一方で、そういった方にもしっかりと対応できる企業は確実にある。理解力の差が明確になってきている気がしますね。

-確かに、支援ありきな会社と自社で対応できる会社だと、どんどん理解力に差が開いていきますね。宮武さんは今の取り組みを通じて、どんな社会を目指しているんですか。

子どもがひきこもった時に、学校以外のルートがきちんと示されている社会になったらいいなぁと思ってます。企業側も、「そのルートから来た人は敷居が高い」と思うのでなく、当たり前のように受け入れられるようになっていて欲しいですね。そのためのサービスをきちんと作っていきたい。誰もが当たり前に選べるような普遍的なサービスに育てていきたいです。

不登校になった時、学校に行くか行かないかの二択しか、今はありません。学校以外の道があるって、みなさん知らないんです。学校へ行かない子が勉強できて、心が発達して、ゆっくり進学して、社会人になれる。そういう場所があっていいと思います。親も社会も、普通を求めすぎて、可能性のある子を潰している気がするんです。行くか行かないか、働くか働かないかっていうせめぎ合いではなくて、別の生き方があるんだってことを自分たちで作りたいですね。

 -確かに、学校に行くことが当たり前になってますが、そうではない道もあってもいいですよね。むしろあるべきなのかも知れません。最後に、1月13日のヒトデTALKでどんなことを伝えたいか教えてください。

不登校とか、過去に社会的に欠点を持っている人を採用できる力は、今後、企業にとって大きな強みになるっていうことを伝えたいですね。逆にそうでない企業には、危機感を持っていただくきっかけになればいいなぁと思います。私は介護業界にいますが、ほとんどの会社が即戦力人材でないと雇用できない状況にあります。そうした状況が、人手不足にさらに拍車をかけている。これからはしっかりと人材を育てる力を養って、就職弱者と言われる人たちでも活かすことのできる企業体質になっていく必要があると思っています。そうしたことを伝えられたらいいなぁと思っています。

-多様性のある人材を活かせる企業体質。本当にこれからの経営に大切なテーマだと思います。宮武さん、どうもありがとうございました。1月13日もよろしくお願いします。

はい。ありがとうございました。

自身のひきこもり経験から、社会に必要なサービスを生み出そうと取り組む宮武さん。その想いの強さに会うたびに驚かされます。きっとこういう人が世の中を変えていくんだろうなぁ、とさえ思うほど。社会に必要な次なるサービスを生み出す宮武さんに、ぜひ会ってみてください。きっと皆さんの背中を押すような出会いになると思います。

Information

日時

平成30年1月13日( 13:30~16:20(受付13:00~)

主催

株式会社Woriks

後援

香川県

場所

ヒトデ事務所(760-0054 香川県高松市常磐町2-14-1 3F)

内容

①ゲスト講演 ②トークセッション ③参加者交流会

費用

1,000円

定員

先着30名

申込

こちらからお申込ください。→http://hitodetalk2nd.peatix.com/
※リンク先のpeatixに上手くアクセスできない方は、info@hito-de.comまでご連絡ください

ゲスト

株式会社サニーサイド 代表取締役社長 多田周平氏
「個性が共生し調和が発展を生む」という理念のもと、「個性」ある社員を積極雇用。29年9月高松市に「SUNNY DAY HOSTEL」を開業するなど、独自の人材育成ノウハウを活かして、元当事者のスタッフと共に事業拡大中。

一般社団法人hito.toco 代表理事 宮武将大氏
自身8年間のひきこもり経験を活かして、ひきこもりの相談事業を始め、ご家族、支援者、企業向けの講演・教育事業や若者のコミュニティ事業などに取り組む。平成30年4月には、就労移行支援事業所を開設する等、精力的に活動の幅を拡げている。