コラム

「自分も障がい者だからこそ、障がい者雇用が社会に広がる仕事がしたい」
サニーサイド 吉川達也さん

10月9日に西日本放送ラジオ「人で見つけよう香川の仕事」の第10回が放送されました。このコーナーは香川ですてきに働く「人」をゲストにお呼びして、お仕事内容やきっかけ、やりがいなどを伺っています。実際に働く人のお話を紹介することで、香川での働き方の多様性を感じていただくと同時に、「この人と一緒に働きたい」や「この人のように働きたい」と感じるきっかけになれば嬉しいです。

今回は、障がい者や元ひきこもり、高齢者など、個性ある人材と共に様々な事業を行う株式会社サニーサイドの業務部総務課で働く吉川達也さんにご出演いただきました。ご自身も心臓に重い病気を持つ障がい者である吉川さんに、多様な雇用を進めるに至った想いやそこからの気づき、今後の展望についてお話を伺いました。急遽、スタジオ見学に来ていた多田社長にも特別出演いただきました。


本番直前で緊張気味の吉川さん

一同 吉川さん、本日はよろしくお願いいたします。

吉川 よろしくお願いいたします。

熊谷 早速ですが、サニーサイドさんはどんな会社なんですか。

吉川 「個性が共生し調和が発展を生む」という経営理念を掲げながら様々な雇用を行なっている会社です。元ニートや引きこもり、障がい者や主婦、学生、LGBTなど、本当にいろんな方が働いています。全体で150名以上のスタッフがいますが、そのうちの半分以上が、障がい者や高齢者、ひきこもりなどのいわゆる就労弱者と呼ばれる方々です。


(「サニーサイドの雇用スタイル」参考:HP:http://sunnyside2011.com)

熊谷 珍しい雇用スタイルですね。どうしてそうした雇用に取り組んでいるんですか。

吉川 今、多くの企業が障がい者雇用に悩んでいます。加えて、最近では人手不足が騒がれてますよね。私たちはその「人手」の枠を広げていこうとしているんです。これまで「人手」は会社目線で捉えられてきましたが、その枠を広げる、つまり、これまで「人手」に含まれることの少なかった人たちの雇用を進めることで、今の社会の課題を解決できると考えているんです。

亀谷 確かに、言われてみたらそうですね。どこまでを「人手」と考えるかは雇う側次第で広げることができて、そこには様々な雇用の可能性がありますね。

熊谷 具体的にはどんな事業をされているんですか。

吉川 主な事業は提携ホテルやショッピングモールなどでのクリーン事業です。他にも自家製麺や完全無添加の出汁にこだわったうどん屋を経営していたり、愛媛県の新宮という地域でお茶の栽培を行なっています。来年の春には香川県でも農業に本格進出しようと考えてます。また「サンライン」というNPO法人も持ってまして、そこでは平成29年4月から障害者就労支援A型事業所を運営しています。


(「サニーサイドのビジネスフィールドイメージ」参考:HP:http://sunnyside2011.com)

熊谷 宿泊事業もされているんですよね。

吉川 そうなんです。ここ(西日本放送) からすぐ近くで「サニーデイホステル」というゲストハウスを運営させていただいてます。国内外からたくさんのお客様にお越しいただいてまして、おかげさまで9月に1周年を迎えました。

亀谷 実は先ほどに見に行かせてもらったんですよ。支配人の松田さんに頼んで中を見せていただきました。リノベーションされていてとっても素敵なゲストハウスですね。

熊谷 予約でいっぱいだって言ってましたね。

吉川 わざわざ足を運んでいただきありがとうございます。ゲストハウスは松田の人柄もあって、多くの方にお越しいただいてます。

 

 

熊谷 吉川さん自身は普段どんなお仕事をされているんですか。

吉川 私は雇用関係や清掃業務の品質管理、会社の広報に関する業務を担当しています。

熊谷 ご自身もご病気をお持ちだと伺いましたが、どんなご病気なんでしょうか。

吉川 はい、私自身も障害者です。心臓に先天性の疾患を患っていてファロー四徴症といいます。心臓に4つの病気があるというものです。私の場合はその中でも複雑な極型ファロー四徴症という病名です。昭和56年に生まれた当時は、とても難しい病気だと言われていて、母親は私が1歳まで生きられないと告げられていたそうです。ですが、色んな先生方とのご縁に恵まれて今日まで生きることが出来ています。

亀谷 大変なご病気だったんですね。

吉川 中学校3年生の時にした手術の成功率は10%以下と言われていたので、正直、死を覚悟していました。手術が終わって目が覚めたときは、「あぁ、生きているなぁ」と思いましたよ。本当に皆さんのおかげです。

熊谷 生かされたんですね。吉川さんはいつからサニーサイドさんで働かれているんですか。

吉川 一年ちょっと前に就職しました。それまでは13年間、香川県のお菓子メーカーに勤めていたんです。初めは障害者雇用枠ということで製造業だったのですが、次第に仕事ぶりを認めていただいて、包装や配送、最後は商品企画まで任せていただけるようになりました。

熊谷 前職でのお仕事も順調だったように思えるのですが、どうしてサニーサイドに入ることになったのですか。

吉川 サニーサイドの常務が同級生だったり、妻が先にサニーサイドで働かせてもらっていたりと、もともと繋がりがあったことが大きかったです。その中で会社の取り組みや理念を知ることが出来て、とてもいい会社だなぁと思ってました。障害者雇用というのは誰かが切り開いてくれたからこそある職場であって、私もこれまでは誰かが整備してくれた所に雇用される側でした。ですが、サニーサイドの取り組みを知るうちに、自分も困っている人のために切り開いていきたいと思うようになっていたんです。それがきっかけで今の会社に移りました。

亀谷 吉川さん自身がご病気を乗り越えてきたというのが、サニーサイドにとってすごくプラスになっていると思うのですが、いかがですか。

吉川 そうですね。やはり私自身も障害者であるということは強みだと思います。病気を抱えながら働いているスタッフも多いので、自分の経験をもとにアドバイスしたりフォローしたりしています。当事者は不安のまま社会に出てきますので、一番最初にしっかりケアしてあげないとなかなか続かないと思うんです。そこに私や他の当事者スタッフの経験を活かせるというのが強みですね。


他のスタッフにも積極的に話しかける吉川さん(手前)と楽しそうに笑うスタッフ

熊谷 実は本日スタジオの外に社長さんもお見えになっているんですよ。ちょっと呼んでお話聞いてみましょう。

多田社長がスタジオへ

熊谷 突然すみません(笑)。お名前をお聞かせください。

多田 サニーサイド社長の多田周平と申します。

亀谷 ご出演予定は無かったんですが、急遽ありがとうございます(笑)。

熊谷 ありがとうございます。まずは色んな雇用を生み出す企業を作ろうと思った経緯を教えていただけますか。

多田 僕らが手がける清掃業界というのは、以前から深刻な人手不足でした。この状態を解決するためには、今まで自分たちが考えていた「人手」という枠を変えないといけないと思ったんです。その意識で世の中を見ると、働きたくても働けない人たちがたくさんいることに気がついたんです。じゃあそうした人たちが働ける環境を作れば、お互いにとって良いのではと思ったことが最初のきっかけです。人口が減っている日本では、あと10年も経たないうちにこれまで以上の人手不足になるのが分かっています。その時、周りの企業さんが困らないように、まずは僕たちが個性を活かした雇用の在り方を示していかないと思っています。

亀谷 日本は人口減少ですがインバウンドは増えてますから、ますますホテル清掃の需要も増えていきますよね。とても大切な課題に向き合われているんだなぁと思います。

熊谷 様々な方と一緒にお仕事されてみて、今はどんなことを感じていますか。

多田 人の可能性が広がったなぁと思います。私たちは「障がい者だからここまでしか出来ないだろう」という思い込みを持ちがちですが、実際に一緒に仕事をしてみると、人にはもっとたくさんの可能性があることに気が付きました。思い込みや先入観がいかに信用できないものかを実感しています。もっと人を信じたいと思えるようになりましたね。

熊谷 吉川さんはどんなことをお感じですか。

吉川 うちの良い所は、距離が近いということだと思います。障害者雇用で採用された方は健常者とは別室で仕事をさせる企業さんが多い中、うちはみんな同じフロアで同じ仕事をしています。つまりフラットなんです。そうした距離感が無い分、コミュニケーションも取りやすいし、仕事もしやすいんだと思います。

熊谷 みんなが同じ雰囲気の中で仕事をするというのは、社長の方針なんですよね。

多田 もちろん最初はそういう職場づくりを心がけたんですが、次第にスタッフ同士でお互い様になってくるんですよ。みんながみんなのことを思いやる空気感というのは、会社がどうこうというよりも自分たちで作ってくれています。

亀谷 みんなで支え合っていて素晴らしいですね。それでもスタッフ同士で揉めたりすることもあるんじゃないですか。

多田 人間同士なので、衝突はもちろんあります。でもそれも自然なことだと思っているので、会社として無理に対策するっていうことはほとんどしません。すると、しばらくすると知らぬ間に仲良くなっていたりするもんなんですよ。

吉川 あえて何も言わないことも大切だと思いますね。気が付いたら、お前らそんなに仲良かったっけという間柄になってますから(笑)

秋吉 私も色んな会社さんを見させていただいてますが、ここまでみなさんがフラットに働いている会社は他にないですよね。誰が障がい者で誰が健常者なのか、一見しただけでは本当に分からないんです。以前、多田社長に「清掃業だからこうした仕組みが作れるのでは」と意地悪な質問をしたことがあるのですが、多田社長は「他業種でも絶対に実現できる」と言い切ってました。そして、それを実現するために宿泊業や農業など、新しい分野に挑戦されてますよね。

熊谷 多田社長のモチベーションやアイディアはどこから湧いてくるんですか。

多田 それは一緒に働いてる人たちが、自分たちの可能性を教えてくれてるんですよ。じゃあ僕らも会社としてそれに応えていかないといけないなと思うんです。よく就労弱者の応援してると言われますが、実際は逆で、皆さんに応援されているような感覚ですね。


多くの個性が活躍するサニーサイド

熊谷 そろそろお時間ですので、最後に皆様から一言ずつお願いします。

多田 社会の人たちに可能性を示したいですね。あらゆる可能性を示せる企業であり続けたいと思ってますので、今後も頑張ります。

吉川 うちだけでなく、共感してくださる色んな企業と一緒に様々な雇用を実践していって、社会全体でみんなが働きやすい環境にしていきたいと思います。

秋吉 言葉ではなかなか伝わりづらいと思いますので、ご興味持った方はぜひサニーサイドさんに見学に行かれてみてはと思います。

多田 はい、お待ちしてます。

熊谷 みなさん、本日はありがとうございました。

一同 ありがとうございました。


最後はスタジオ見学に来ていたスタッフも含めて集合写真