コラム

「とらわれない働き方や人生を伝える」
ライター 岡安早和さん

人は気付かぬうちにとらわれてしまう生き物。「常識」や「当たり前」に自分自身をはめ込んで、本当の自分の気持ちに気付かぬまま過ごしている人も少なくないのではないでしょうか。高松市のライター 岡安早和さんもかつて「とらわれていた人」の一人。宮崎から東京へ。迷いなく進んだ土地で出会ったのは「なんで東京が良かったんだっけ?」という問いでした。夫の転勤を機に移り住んだ高松で挑戦するのは、「働く人を通じて色々な人生を伝える」というもの。「常識」や「当たり前」の一言では語れない一人一人の人生を伝えることで、見えない何かにとらわれている人たちのヒントになればと願っています。

なぜ、とらわれない働き方や人生を伝えるのか東京でのキラキラした生活を信じて疑わなかった私に起こった変化人生を輝かせるカード

 

なぜ、とらわれない働き方や人生を伝えるのか

はじめまして。岡安早和と申します。この度、ヒトデの一員として、香川県で働く方々の姿をお伝えしていくことになりました。香川県にやって来たのは、2017年の4月。夫の転勤がきっかけで、東京から引越してきました。それまで、香川県には縁もゆかりもなかったものの、今ではすっかり友人もでき、楽しい日々を送っています。東京では、会社員として働いていましたが、転勤族の妻となったことをきっかけに、全国どこでもできる仕事がしたい、とフリーライターとして活動中です。さて、そんな私が、ヒトデを通して自分自身に課した使命は、「とらわれない働き方や人生を伝える」ということ。今回は、自己紹介がてら、私がなぜこの使命に思い至ったのかについて、お話したいと思います。


岡安 早和(おかやす さわ)さん
大学卒業後、企業の法務部にて勤務し、転勤族の夫との結婚を機にライターに転身。2017年から香川県高松市在住。

東京でのキラキラした生活を信じて疑わなかった私に起こった変化

私が香川県に引越すことが決まった時、東京の友人達から、よくこんなことを言われました。「何にもない地方でよく暮らせるね」 「東京を離れる決断をして偉いね」地方で暮らす方々が聞いたら怒りそうな言葉です。しかし、モノや情報が溢れる東京で暮らしていると、こういった感想を持ってしまうのは、致し方ないのかな、とも思います。私自身は、地方で暮らすのも楽しそう、と思ったからこそ転勤族の妻となったわけですが、実は、数年前までは、東京で暮らすことに固執しているタイプの人間でした。

私は、元々九州の宮崎県出身で、太陽の光を浴びながら、のびのびと育ちました。宮崎県は、温暖な気候で、食べ物もおいしく、暮らすのには、とても良い場所だと思います。しかし、行動範囲が限られる子どもの頃の私にとっては、まさに「何もない地方」そのもの。地元を離れたいという一心で、大学進学を機に、上京することにしたのです。


宮崎時代の岡安さん(右端)

大学生らしい大学生時代を過ごした後は、地元に面白い仕事なんてない、と決め付け、当然のように東京で就職活動を行ないます。就職活動は、非常に苦戦を強いられるものでした。それでも「絶対に地元には帰らない」という決意だけは揺るがず、無事、東京の企業で働くこととなりました。当時の私は、六本木にあるオフィスが自慢でしたし、正直に言うと、地元で働く友人に対して、少し優越感もありました。そして、「この先もずっと東京でキラキラした生活を送ってやるんだ!」と信じて疑いませんでした。


東京に憧れていた学生時代

では、そんな私に変化をもたらしたものは何なのか…。こんなことをいうと、目を見張るような魅力的なエピソードを期待されてしまいますが、残念ながら、特にありません。強いて挙げるならば、社会人3年目の頃、当時お付き合いしていた夫に、「僕と結婚したら全国転勤だよ?」と言われ、「そもそも、私は、なんで東京が良かったんだっけ?」と、ふと我に返ったことでしょうか。その時の私は、世間で言うところの、都会の息苦しさや虚無感に苛まれていたわけでもありません。仕事も楽しかったですし、友人もたくさんいました。一応言っておきますと、「愛の力があればどんな場所でも生きていける」という感じでもありませんでした…。しかし、気がつけば、「色々な場所に、色々な人生がある」、そう思えるようになっていたのです。それまで正体不明の何かにとらわれていた私は、この時から精神的にぐっと楽になったような気がします。何だか、心のとげとげしい部分が無くなった感覚です。ただ、楽になったのと同時に、もっと早くに気がつけていたらな、という後悔も心の中に少しだけ残りました。

人生を輝かせるカード

何かにとらわれてしまうのは、仕事を選択する場面でも同じです。自分はこんな仕事しかできない。大企業が良い。この場所で働くしかない。ここに他人との比較が加わると、さらに辛くなります。人生は、仕事だけでなく、家族やお金、心、といった様々なものがバランスを取って成り立っているはずなのに、何かに固執していると、そのバランスがおかしくなってくる。知らぬ間にそこに苦しんでいる人は、案外多い気がします。

ヒトデの記事に登場する人たちは、仕事とは別の場所にも自分の居場所があるような気がします。家庭でも良い、趣味でも良い、人生を輝かせる色々なカードをもっているかのようです。そんな「人」そのものを紹介するヒトデの記事は、人生のバランスを保つためのヒントになる、と私は思っています。私と同じ境遇の人を救ってあげたい、そんな大それたことを言うつもりはありませんが、少なくとも「こんな生き方もある」と伝えることには、大きな意味があるはずです。もしかしたら、どなたかの人生を豊かにできるかもしれない。そんな想像をしながら、これから記事を書いていくつもりです。

と、ここまで、かっこいい言葉を並べてきましたが、私も、転勤族の妻として、ライターとして、どう生きていくべきか、長いこと答えを出せずにいます。今でも、週5日・定時で働かないことに罪悪感を覚えたり、どこの組織にも属さないことに急に不安になったりします。つまり、私もまだまだ、何かにとらわれているのです。最初に言った、「とらわれない働き方や人生を伝える」という使命は、私自身が生きるヒントをもらうためでもあるのかもしれません。これから、私の頭の中には存在しなかったような働き方や人生に出会えることが、とても楽しみです。