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「『福祉』だけでは人は幸せにならないと考えているんです」
『 ひきこもり 』と『働く』を考える ヒトデTALKレポート

目次

個性が共生し調和が発展を生む誰もが公平。それが当たり前10年後の未来満員電車に乗れない夢を何度もみる自分の葬式を妄想したことがきっかけ「福祉」とは何か?分解と自信夢の話はしないもう一度ひきこもるために?

 

『「働く」の幅を拡げる』

人は常に誰かと働いています。人は不思議なもので、同じ仕事であっても、ともに働く人によって幸せな気持ちにもなるし、暗い気持ちにもなります。だから、少しだけ顔を上げて、隣にいる誰かを見つめ、どんな人であるかを知りたい。誰かを知るということが、「働く」という価値観の幅を、少しだけ拡げてくれます。そして、その拡がりが、誰もが自分らしく、活き活きと働ける社会を創っていくのだと信じています。

こんな想いから動き出したイベント「ヒトデTALK」。第二回目は『「ひきこもり」と「働く」を考える』と題して、障がい者やひきこもりなど、様々な「個性」ある社員を積極雇用している(株)サニーサイド代表取締役の多田さん、ひきこもりの相談事業を始め、ご家族、支援者、企業向けの教育事業や若者のコミュニティ事業などに取り組む(一社)hito.toco代表理事の宮武さんをお招きし、人材不足時代に打ち勝つための「個性ある人材の活用」のリアルについて、トークセッションを行いました。

※読む時間目安 5〜10分

個性が共生し調和が発展を生む

秋吉 多田さん、宮武さん、本日はよろしくお願いいたします。まず多田さんから、自己紹介をお願いします。

多田 はじめまして、株式会社サニーサイド代表取締役多田と申します。1977年生まれの40才です。琴平生まれで琴平育ち、今も琴平に住んでます。2才年上の奥さんがいて、奥さんも学生時代、3年間ひきこもっていました。ちなみにいうと、奥さんのじいちゃんは40年間、戦争から帰ってきて、ずーっとひきこもったまま亡くなりました。そんなこんなで、ひきこもりにはなにかと縁があるんです(笑)。

株式会社サニーサイド 代表取締役社長 多田周平氏
「個性が共生し調和が発展を生む」という理念のもと、「個性」ある社員を積極雇用。2017年9月高松市に「SUNNY DAY HOSTEL」を開業するなど、独自の人材育成ノウハウを活かして、元当事者のスタッフと共に事業拡大中。

会社を作ったのは7年前。「個性が共生し調和が発展を生む」というのが、うちの会社の経営理念です。従業員数が大体160人、うちパート・アルバイトさんが145人、社員が15人。レオマワールド全体の清掃管理であったり、香川県内のイオンやマックスバリュ、高知県のサニーマート、琴平の旅館など、様々な施設の管理をしています。こうした清掃管理、ビルメンテナンスの仕事の他にも、レオマワールド内でうどん屋さんをやっていたり、四国中央市でお茶の栽培をしたり、2017年には高松三越の近くでサニーデイホステルというゲストハウスを始めました。関連法人のNPO法人サンラインでは、障がい者就労支援A型事業所をやっています。合計で5つの事業ですね。2011年3月1日、33才の時に起業したんですが、掃除の仕事は20才の学生の頃からアルバイトでやっていました。その後、大手の会社に入ったんですが、2年ぐらいでやめて。兄貴が同じようにビルメンテナンスの会社をしていたので、そこで取締役をしていたんです。8年くらい一緒にやっていたんですけど、上の理念に共感できず辞めたんです…まぁ要は兄弟喧嘩です(笑)。そこから自分で会社を作ってスタートしました。

誰もが公平。それが当たり前

うちの特徴を簡単にいうと、働く人の様々な価値観を受け入れて、それを成果に結びつけるということです。どのような社会的背景があっても、うちで働く以上、皆公平に扱われます。障がいを持った人、ニートひきこもりだった人、高齢者、LGBT、発達障がいなど、様々な人が働いています。他の企業さんでは、障がいを持っている人専用の仕事があるとか、一般の人と明らかに作業内容が違うといったことがよくありますが、うちにはそれがありません。みんなが同じ仕事。どういった障がいがあろうと、どういった社会的背景があろうと、みんな公平なんです。今、サニーサイドには、元ひきこもりと香川大学の大学院に通う学生、知的障がい者の仲良し3人のスタッフがいます。先日もその3人で、レオマのホテルに泊まって遊んだりしてましたね。こういったことがよく起きます。普段、僕らが生活していて、障がいを持ってる人とかに出会って普通に接するってことってなかなか無いじゃないですか。まして友達になるなんて、ほとんどない。でも、サニーサイドの場合、それが当たり前のように起こるんですよ。それはみんなが公平に扱われるからだと思うんです。正直いって時給すら同じですから。むしろ障がいがあっても、いわゆる健常者の人より時給が高い子がいっぱいいます。どんな社会的背景があっても、うちの会社にいるかぎりそんなのは関係なくて、まず仕事ができて一生懸命やっている子が評価される。そういった仕組みになってるんです。

全社員中、障がいを持っている人(手帳を持っている)が33名。元ニートひきこもりだった人が38名。高齢者(65以上)が30名。LGBTも1名。つまり、就労に置けるマイノリティの人たちが大体100名以上います。そんな会社ですが、売上は今期が約2億6000万円があって、経常利益が約3400万円あります。同業種と比較すると、利益は香川県で1番です。それぐらい儲かっています。障がいを持っている人をたくさん雇用しているので、雇用助成金をもらって稼いでいるんじゃないかとよく言われるんですが、3400万円のうちの雇用助成金は108万円くらいですね。97%くらいは本業でしっかり稼いでいるんですよ。何が言いたいかというと、本業で稼いでいるということは、さっき言ったマイノリティの人たちが、自分達のもらっている給料以上の生産性を出しているという証拠なんです。その人達の能力が100%以上発揮されていることの証明なんです。そこに僕らはかなりこだわっていて、その人達の能力を活かせなければ、僕らの負けだと思ってるんです。それを判断する基準として、売上とか利益はとても大切に考えてます。

10年後の未来

最後に一つだけお伝えしたいことがあります。事業をするうえで、すごく大切なことです。皆さんは、10年後どんな社会になっているかっていうことを予想できますか?明日の新聞で、何が一面トップをかざるかなんて誰も想像できないと思います。けれど、10年後どういった社会になるかは、実は確実に予想できるんです。それは人口構成を見れば分かります。その推移をみれば、10年後どういった社会になるのかってことは、予想できます。ここで少し考えていただきたいんです。あと7年、2025年になったら、65才以上の人が約3600万人、人口比率でいったら30%になります。3人に1人はいわゆる高齢者です。他にも、障がいを持っているの人口比率を言うと、平成18年6%。平成23年6.7%。平成28年はまだ公表されていませんが、7%は楽に超えていると思います。LGBTが平成25年で7.6%。発達障がいが6.5%。ニート、ひきこもりが11%いるとそれぞれ言われてますね。重複もありますが、単純にこれらを足すと60%超えるんです。つまり、今まで私たちがマイノリティだと思い込んでいたものが、実はマイノリティではなくなるんですね。それが当たり前の社会に近づいているんです。そして、その人たちの働く場所を確保することが、会社の役目の1つになるんです。それでもまだまだそうした意識を持った経営者や会社は多くありません。もう少し、それぞれが真面目に取り組み始めないとまずいと思ってます。だから、そうした方々を雇用して、これだけ成果を出しているということを、多くの人に伝えたいと思っているんです。社会的に意義のあることをしながら、会社としての利益も出す。これを証明したいんです。福祉ではなくて、企業として、これだけ個性のある人たちと一緒に、しっかりと利益を出しながら様々な事業を展開している企業は他にないと思います。その意味でうちの会社は日本一です。まぁ、そんな変な会社ですけど、なんとか7期やってます。今は丸亀市に拠点がありますが、今後は高松市にも軸足を置いて頑張りたいと思ってます。うちの会社が活躍すればするほど、ここに来ていただいている支援団体の方や、諸々関係者のみなさんが喜んでくれると思うんです。そんな会社です。どうかよろしくお願いします。

秋吉 ありがとうございます。以前、多田さんとお話させていただいた時、経営理念をスタッフの皆さんにわざわざ伝えるということをしないとおっしゃってましたが、その理由をもう一度お聞かせいただいていいですか。

多田 ああ、ほとんど伝えないですね。会社とか家庭でもそうやと思うんですけど、「こうでなければならない」っていう既成概念ってあるじゃないですか。会社だったら、しっかり挨拶しなきゃならないみたいな。でも、人と喋るのが苦手な人っているんですよ。それを無理に挨拶しなきゃいけないとか、しなきゃ怒られるとか、そういうのって嫌じゃないですか。既成概念で人を押し付けるのが嫌なんです。「個性が共生し調和が発展を生む」がうちの理念。みんなの個性をありのまま受け入れて、出来ないことは出来ないことでいい、出来ることをしっかり見ようと常に考えているんです。だから経営理念は掲げてますが、それを無理やり押し付けたり、言わせたりすることはしないんです。それをやると、言ってることとやってることが逆になりますから。先ほども言いましたが、うちには様々な人が働いていて、それがまさに経営理念を体現しているんです。だからあえて言うこともしません。経営理念通りに経営するだけです。

秋吉 多田さん、ありがとうございました。サニーサイドの取り組みを多くの人に知ってもらいたいと改めて感じました。それでは次に宮武さんお願いします。

宮武 多田の大予言のあとで非常にやりにくいんですけど(笑)。僕はhito.toco(以下「ヒトトコ」)という一般社団法人でひきこもりの相談支援事業とか、支援者のかたに教育向けで授業や講演活動をしています。あとはU35っていう35才以下のコミュニティ活動を四国4県でやっていて、3年目になっています。300名ぐらいのメンバーがいて、人数としては900名ぐらい参加してくれています。

一般社団法人hito.toco 代表理事 宮武将大氏
自身8年間のひきこもり経験を活かして、ひきこもりの相談事業を始め、ご家族、支援者、企業向けの講演・教育事業や若者のコミュニティ事業などに取り組む。平成30年4月には就労移行支援事業所を開設する等、精力的に活動の幅を拡げている。

僕自身、不登校ひきこもりを8年間経験しています。今32才なんですけれど、20才で社会復帰したので復帰してから12年経ちますね。 就職して4年、支援活動自体を初めて6年です。今日は不登校ひきこもりの期間の8年についてお話できたらと思ってます。なぜひきこもったのか、引きこもっている間なにをしていたのか、どうやって社会復帰したのか、その間の親や学校、支援者との関わり方など、そのあたりの話を通じて、今日のテーマでもある「ひきこもりと働く」ってことを考えていけたらと思います。

満員電車に乗れない夢を何度もみる

僕がひきこもりになったきっかけは小学校の時でした。学級委員長とかもやったりしてて、真面目で活発な方だったんです。365日外で遊ぶような子でした。だけど、5年生になった時に先生がかわって、本当に教育熱心な先生だったんですが、逆にだんだん勉強ができなくなったんです。と同時に、学校に行こうとすると体調が悪くなる症状が出始めました。学校へ行かなくても良い状況になると、治るんです。精神的な問題が大きかったと思います。最初は親も先生もなんとか僕を学校に連れて行こうとするんですが、あまりに泣きわめく僕に親が観念して、「もう学校へ行かなくてもいいよ」と言ってくれたのが、ひきこもりの始まりです。当時は同じような夢をよく見ました。線路に佇む僕の横を、同級生を乗せた満員電車が走り去っていく夢。「置いていかれた」と言うと目が覚めるんです。精神的にも不安定になってました。家ではよく幻覚を見ていたそうです。僕自身はよく覚えていないのですが、親がそう教えてくれました。

中学校でもひきこもりを続けて、やることといったらゲーム・漫画・パソコン。昼間出かけると同級生に会う可能性があるので、出歩くのは決まって夜でした。誰にも気づかれないように、必ず帽子を深く被りましたね。今では絶対帽子は被らないんです。僕にとって帽子はファッションアイテムではなくて、自分の身を隠すものなんですよね。そのイメージが離れず、当時を思い出してしまうので、帽子は被らないようにしています。中学の卒業式は校長室で行ったのですが、卒業式を終えて学校から出た瞬間に、「やっと終わったぁ。学校から解放されたぁ」と思いました。義務教育を終えたら、学校に行かない人もいる。自分は何も変わった人じゃないと思えるのが嬉しかったんです。あれほど嬉しさはそれまでなかったですね。世界が明るくなったのを覚えてます。

自分の葬式を妄想したことがきっかけ

引きこもっている間、とにかく時間があるので、いらん事ばっかり考えてました。生きる意味とか死ぬ意味まで。もちろん自殺も考えたこともあります。自分の葬式のことまで妄想しました。でもその時に思ったのは、これまでものすごく献身的に関わってくれた親を泣かせたくないなぁっていう気持ち。とりあえず、親が死ぬまでは死なないぞ、と決意したのが18才の時でした。それがきっかけになって20才の時にスーパーのアルバイトをスタートして社会復帰するんです。周りに50代60代の女性が多い職場だったんですが、コミュニケーションなどは特に問題なくできて、仕事も上手くできてたんです。「社員にならないか」と声をかけてもらったりもしたんですが、よくよく調べると高卒以上でないと社員登用できないということになり、とてもショックでした。どんなに頑張っても、高卒以上じゃないと認められないのかと。そこから通信制の高校に通うようになって、色んな人の応援もあって大学にも進学できたんです。

28才でようやく介護の会社に就職したんですが、社長がめっちゃ変わり者だったんです。だからこそ、僕みたいな人を評価してくれたんです。働いているうちに気が付いたことは、普通に学校卒業して、普通に働いている周りの大人たちも、意外にまともじゃない人が多いなぁってこと。いい意味ですよ(笑)。不揃いな人たちが不揃いなことを言ったり、悩んだりしているなぁと思いました。僕はそれを見てすごく安心したんですよ。学生時代はみんなと一緒じゃなきゃって気持ちがあったんですけど、社会人はそうじゃなくていい。等身大の自分でいいんだって。そこからだんだん楽しくなってきて、仲間と呼べる人もできた。不登校になってから20年経ってようやく本来の自分の感覚が戻ってきた感じです。こうした自分の体験も踏まえて、今はひきこもりの方のサポートをしています。それでもやっぱり思うのは、一発逆転パンチのような解決策はないということです。やっぱりその人に合わせたサポートを継続してやっていく以外に方法は無いのかなと。僕も20年かかったので。周りにいる方もそうした理解のうえで、ひきこもりと関わるようにしてくれたらいいのかなぁと思います。ヒトトコは4月から就労移行事業をスタートさせます。引きこもってる人や障がいを持っている方が就労するためのトレーニングをしていきます。ここにいらっしゃる皆様のご協力もいただきながら進めて参りたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。

「福祉」とは何か?

秋吉 お二人ともありがとうございました。ここから3人でトークセッションしていきたいと思います。まず伺いたいのが、お二人とも「福祉」という言葉を日頃からほとんどお使いにならないですよね。それぞれのサービスを語る時も「今までの福祉事業とは違って」という枕詞が付くことが多い。その辺り、既存の「福祉」をどう捉えて、何を意識されているのか教えてください。

宮武 すごい難しい質問ですね(笑)。私の中でこれまでの福祉事業は本当の目的を見失いやすい構造になっていると思います。補助金などの公費に頼って運営している所が多く、その場合、本来の目的である「ひきこもりや障がい者の自立」ではなく、「いかにその施設に通ってもらうか」が目的になってしまいやすい。規定の人数を揃えていることが、助成金の条件になったりしてますから。ですからヒトトコでは、サービスを受ける人からしっかりとお金をいただいて回る仕組みを考えたいと思ってます。今でも、一度の家庭訪問で1万円いただいていて半年分の約6万円で、ある程度結果を出すことにこだわっています。お金をいただく以上、こちらも最短で結果をだすことが求められますから。その根本には普遍的なサービスを作りたいという気持ちがあります。学校へ行かなくてももう一つのスタンダードがある状態にしたいんです。今は、学校へ行くか行かないかの二択ですが、将来的には学校へ行きたくない人も「こっちの道がある」と思えるような仕組みがあっていいと思うんです。そのためには、既存の福祉的な考え方にとらわれずに、しっかりと受益者からお金をいただいて継続できるサービスを作っていく必要があると感じています。

多田 私は「福祉」だけでは人は幸せにならないと考えているんです。「福祉」という字は、両方とも「幸せ」を意味する字なんですよね。「幸せ」と「幸せ」を足して「福祉」。これって不自然じゃないですか。人間生きていれば、嬉しいことも辛いこともありますよね。それが私たちにとって自然だと思うんです。ですが、福祉施設にいる子どもたちは、辛いことや苦しいに耐えられなくなってしまいがちです。少しでも大変なことがあると「無理せんでいいよ」とストップがかかる場合が多い。これが彼らの本当の幸せを奪っているような気がしているんです。サニーサイドの仕事は掃除ですから、身体を動かすし、夏は暑くて、冬は寒い。それでもうちのスタッフは毎日決まった時間に来て、一生懸命に汗をかきながら夢中で仕事してますよ。正直、見学に来られた福祉施設の方はいつもびっくりします。「どうしてこんなにハードなことさせてるのに、毎日休まず来るんですか」「あの子たちがあんなに一生懸命に働くなんて、奇跡ですね」と。なんででしょうね。奇跡なんですかね。光と影と同じように、苦しいことも幸せなことも両方あって自然ですよね。そういう社会を作りたいなぁと思ってます。だからあえて福祉的な思考にならないように意識しているんです。両方のバランスがあって、初めて人は幸せだと思うから。

分解と自信

秋吉 ありがとうございます。お二人の事業の根っこにある想いを伺えた気がしてます。多田さんにさらに伺いたいのは、実際サニーサイドではどんなオペーレーションになっているかということです。個性あふれる人材をマネジメントするのは一筋縄ではいかない訳ですが、なぜサニーサイドではそれができて、しかも年間3,400万円もの利益をあげることができるのでしょうか。

多田 まずやったことは、一つの仕事をできるだけ細かく分解するということ。基本的に清掃の仕事は1人がいくつかの項目を担当していることが多いですが、サニーサイドではそれを7つの項目に分担しています。Aさんはトイレだけ、Bさんはお風呂だけを担当するといったように分担し、チームで一部屋終わらせるようにしています。こうすると、1つ1つの仕事を覚えるのが早いんです。7つ全部覚えようと思ったら時間がかかりますが、1つだけなら2日くらいあればどんな子でも覚えられるんですよ。すると「私でもできる。役に立てる」と思ってもらえるんですよね。そうなったら仕事が続くんですよ。通えるようになるんです。自信がつくと自分から2つ目3つ目とチャレンジしていくようになります。仕事を分解して、自信をつけてもらう。そうすると、生産性を高めることができるんです。

秋吉 なるほど。分解して自信をつけさせると、自ら進んで仕事をするようになるわけですね。ちなみにそうした仕組みは他の業種でも可能だと思いますか。

多田 可能だと思います。大切なのは出来ないことに意識を向けるのではなく、できることに意識を向けることです。分解して、どれができるかということを意識することができれば、どんな業種であっても彼らの活躍の場はあると思いますし、もちろんそれで企業は利益を出すことは可能です。できないことをできるようにするのではなくて、できることをさせてあげるだけです。

宮武 以前、僕が支援した人をサニーサイドに紹介させていただいたんですが、その際にサニーサイドのスタッフから言われた言葉がとても印象に残っています。「枕さえ持てれば採用します」びっくりしました。言葉を選ばずに言うと、普通の企業であれば採用しない人でも採用している印象があります。「今にあまり興味はなくて、半年後にどうなっているかが問題。しかもそれは本人たちの問題ではなくて、我々教育側の問題です」とまで言ってくれました。こんなに懐の大きい企業は多くないです。企業力を感じます。

秋吉 次に宮武さんに伺いたかったのがまさにその企業力なんですが、日頃宮武さんが当事者サポートをする中で、企業さんとの関わりもあると思います。その中で、当事者を任せられる企業とそうでない企業とではどんな違いがありますか。

宮武 やはり人材育成ができるできないという部分が一番違いが現れると思います。どの企業も基本的には即戦力が欲しいはずなんです。できるだけ手をかけずに1人前としてカウントしたいと思っています。その場合、元々引きこもっていた人を採用していただくのはかなりハードルが高くなるんです。でも、サニーサイドさんのように、自社で育成できる素地があれば、当事者の活躍の場はもっと増えると思いますし、そうした企業さんは人手にあまり困ってないですよね。介護や清掃であっても、幅広い人材を戦力にできるわけですから。そうした企業力がある会社が今後は強いと思いますね。

夢の話はしない

秋吉 人材を育てる力が企業力に繋がるわけですね。ありがとうございました。ここで会場から質問を受けたいと思います。どなたかいらっしゃいますか。

参加者A 多田さんに伺いたいのが、人材の評価についてです。私も会社を経営していて、うちも障がいのある方と高齢の方を合わせると全体の3割ほどになります。健常者も含めた人事評価についてどのようにされているかお教えください。

多田 ご質問ありがとうございます。評価は、いわゆる健常者、いわゆるニート・ひきこもり、障害を持ってる方、全てごちゃ混ぜでやってます。優劣、評価の仕方は、仕事が早く綺麗にできるかどうかだけです。全てそれで時給や評価が決まるんです。いわゆる健常者の方でも、成果が悪い人は時給が低いケースもありますし、障がいを持っている方が高時給のケースもあります。そこに背景やら性格やらは全く考慮しません。特別扱いや色眼鏡は一切使わない。障がいを持っている人用の仕事もないですし、みんな同じ仕事です。だからみんな同じ指標で測っています。

参加者B 多田さんに個性あふれるスタッフの皆さんにどうやって夢やビジョンを持たせるのかを伺いたいです。福祉的な感覚ではどうしても「賃金がもらえるだけでありがたい」とか「働けるだけでありがたい」といった発想になりがちだと思いますが、その先の夢やビジョンを持つことも必要だと感じていて、その辺り多田さんはどのようにアプローチしているのかを教えてください。

多田 うーんと、うちで働いているスタッフは若い子が多いですが、夢とかビジョンとかそういう話は一切しないですね。本当にその子らを特別扱いしないんです。障がいがあろうがなかろうが、普通に会話してます。普通の会話の中で「車の免許取りたい」とか「結婚したい」とか本人たちが勝手に思えばいいのかなぁと思ってます。僕らもそうじゃないですか。会社からそれを言われるのは不自然だと思うんです。仕事や人との触れ合いを通じて、本人が気づいた時がそのタイミングなわけで、会社からどうこうっていうことはしてないですね。

もう一度ひきこもるために?

参加者C 私も経営者をやっています。個性のある人材を活用して経常利益14%というサニーサイドさんの経営には、並々ならぬ経営努力があるのだろうなぁと感じています。ですが、今日の多田さんのお話を聞いて、弊社も同様に個性ある人材の登用を検討していきたいと感じました。お二人に質問です。事業者としてのゴールはなんでしょうか。

多田 最終地点は、実はあんまり考えていないんですよ。本当に。ただ、目の前の現場をより良くしようと考えてます。チャレンジして気づいたことをすぐに改善する。それの繰り返しですね。未来を思うより、目の前の現実を直視してそれを良くすることに集中してます。

宮武 僕の中で、今の取り組みってお礼参りのような感覚なんです。これまで色んな方に支えられてきたので、その恩返しを40歳までやろうと決めています。それがある意味ビジョンですね。残り8年間で普遍的なサービスを作って、最終的にはもう一度ひきこもりたいです(笑)。だって社会人って大変じゃないですか。引きこもっている時って、今思うと結構余裕があったんですよ。人は「社会人はいいよ」って言うけど、ほとんど嘘でしたね(笑)。 40才までは人のために、それ以降は自分のために生きる。そうなれるように、しっかりサービスを作っていきたいと思ってます。そのためには、企業との提携がとても大切だと思ってます。企業と連携しながらリスクの少ない形で人材育成ができたり、供給ができたりする仕組みを作っていきたいと思ってます。

秋吉 ありがとうございました。そろそろ時間になりましたので、ここで終わりたいと思います。今回はテーマがたまたまひきこもりでしたが、多様になっている人材といかに共生するかが本質だった気がしています。多田さん、宮武さん本日はありがとうございました。

多田宮武 ありがとうございました。

 

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