求人

「自分探しでもスローライフでもない、私が島で働く理由」
小豆島ヘルシーランド 八倉巻絵美さん

「海は広いな大きいな 行ってみたいな、よその国」瀬戸内海に、海の壮大さを描いたこの歌は似合わないのかもしれない。それは、泳いで渡ってしまえそうな距離にいくつも島が浮かんでいるから。その島々から人々の暮らしの香りがするから。瀬戸内海を船で渡っていると、最果ての外国よりも、島に息づく生活を知りたいと思う。スローライフ、丁寧な暮らし、自分探し。島で暮すとは一体どういうことなんだろう。

 

自然な感情から始まった島暮らし入社理由は「この会社変わってるなぁ」いつもの日常を面白がれる人と一緒に働きたい必要以上の『理由』はいらないのかもしれないヒトコト

自然な感情から始まった島暮らし

今回の舞台は、小豆島。瀬戸内海に浮かぶ島の中で、淡路島に次いで2番目に大きく、醤油やそうめん、オリーヴが特産品だ。最近では観光客や移住者の増加に伴い、おしゃれなカフェや観光スポットも増えるなど、島全体に新たな動きが拡がっている。

取材に応じてくれた八倉巻 絵美(やぐらまき えみ)さんも移住者のひとり。2013年に、夫と当時3歳だった長男と、雪国 富山県から引越してきた。「昔から主人も私も旅行が好きで、よく海外にも行っていました。そうしているうちに、だんだん旅行だけじゃ物足りなくなってきて。もっとその土地を知りたいっていうか、暮らしてみたいな、と思うようになったんです。別に島に住むことにこだわりはなかったんですけど、何となく小豆島の移住ツアーに参加してみたら気に入っちゃって…『私、ここに住みたい』って言ったら、主人が『いいよー』って(笑)」

なんかここ好きだなーー。八倉巻さんの小豆島暮らしは、ごく自然な感情から始まっていた。「休みの日は、子どもと自然の中で遊んでリフレッシュしてます」小豆島は自然豊かな土地だ。道の向こうには海が、ふり返ればすぐに山がある。この日は、サンサンと太陽が降り注ぎ、穏やかな海は一層青く、深い緑の木々は輝いて見えた。「自宅のキッチンからは瀬戸内海が一望できて、それが最高なんです。未だに感動します」

入社理由は「この会社変わってるなぁ」

移住後の八倉巻さんは、「せっかくだから小豆島らしい仕事に着きたい」という想いで、現在勤める小豆島ヘルシーランド株式会社(以下、ヘルシーランド)に興味を持った。ヘルシーランドは、自社で育てたオリーヴを原料に、化粧品や健康食品の製造・販売を行っている。メインはオリーヴ製品の通信販売だが、最近では小豆島のさらなる発展を目指し、アートや文化的な事業も展開している会社だ。

 

 

学生時代は、環境保護について学び、小豆島に移住してくる以前は、リサイクルや代替エネルギーの仕事に携わっていた八倉巻さん。美容や健康にも、さらには通信販売にも見識がなかったが、最終的にヘルシーランドを選んだのは、「おもしろそう」だったから。「最初の印象がすごく変だったんですよ(笑)。採用面接が副社長だったんですけど…ジーパン履いてるし、副社長が足で拍手?して笑ってるし。それまで固い会社に勤めていたので、『この会社変わってるな』と思って(笑)」そんな八倉巻さんの直観は、見事的中することとなる。「入社してからもやっぱりおもしろかったです。たとえばうちの会社、山の上に『オリーヴ神社』っていう神社を持っていて、社員が交替で御祈りに行くんです。最初はびっくりしましたよ(笑)。他にも、『たくさんできたから~』って会社でお芋とかスイカとかもらったり。そういうところは他の企業にはない独特なところかもしれませんね」ヘルシーランドでは、オリーヴの白い花が咲く初夏にお花見が開催されるそうだ。小さな小豆島にありながら、100名以上のスタッフを抱える企業だが、それでも家族的な温かみを端々に感じる。取材中、社内を見回してみても、楽しそうに話す社員が目立った。「さっぱりして気持ちの良い社員が多いと思います。夫婦喧嘩かっていう位言い争ってる場面もたまに見ますけど、その数十分後には仲良くランチしてるから不思議ですよね」

 

 

今でこそ生き生きと働く八倉巻さんだが、それまで環境保護に深く携わっていただけに、転職した当初は利潤追求の世界に対しての葛藤があった。「正直、最初は罪悪感のようなものがありました。でも、『荒れていた肌が改善しました』っていうお客様からの声がたくさん届くんですよ。特に女性って、肌が綺麗になると気持ちも明るくなるじゃないですか。今では、お客様の声とか、『お客様の生活を豊かにできたらいいな』っていう想いがモチベーションになってますね」

いつもの日常を面白がれる人と一緒に働きたい

こんなはずじゃなかったーー。人生に何か変化が訪れた時、頭の中でこの言葉がよぎってしまうことも少なくない。その点、八倉巻さんは自分自身の中で『折り合い』をつけるのが上手いのかもしれない。目の前の状況を受け入れて、そこから、どうやっておもしろさを見つけていくか…とても前向きで、あくまでも現実的だ。「ハプニングでも、何でも、前向きに楽しめる人がヘルシーランドには向いてると思います。お芋もらえちゃうような家族的な社風は、良くも悪くも独特な部分があります。でも、良いところを見つけられるというか、ヘルシーランドを好きになってくれるような人と一緒に働きたいですね」さらにこう続ける。「それと、島での暮らしも含めて、おもしろいと思えるかどうかも大切じゃないかな。どこに行っても知り合いがいますし、特に子どもがいると、お祭とか消防団とか、地域のコミュニケーションは濃いです。隣に住んでる人の顔も知らない、っていう都会の人からすると特殊な環境かもしれない。野菜とかお魚とか分けてもらえる生活、私はいいなーって思いますけどね」

必要以上の『理由』はいらないのかもしれない

90年代頃からだろうか、『自分探し』という言葉が流行った。仕事や人間関係に疲れた主人公が、全てを捨て、新たな土地で本当の自分を発見する…似たような映画や小説が世の中に溢れた。私達はそういうストーリーが大好きだ。けれど、八倉巻さんにいくら質問しても、ついぞ劇的な話は出てこなかった。肩透かしをくらったような感は否めない。「スローライフを送るつもりで移住してきてもいないですし、会社員として普通に働くつもりでした」のんびりしているわけでも、変に意気込んでいるわけでもない。小豆島が自分の何かを変えてくれるとも期待していない。好きな場所で、働き、遊び、家族や友人と日々を過ごす、八倉巻さんの周りには、ただただ、そんな毎日があるだけだ。


八倉巻さんオススメのカフェでのひととき

私達は、必要以上に『理由』を欲しがる。この場所に住む理由-。この仕事を選ぶ理由-。この人と結婚する理由―。理由がないと前に進むのが怖いから、時には他人に、そして自分にすら嘘をつくこともある。それに対して、八倉巻さんのモットーは、『おもしろい方を選ぶ』「どんなことも、あまり考えすぎないようにしてますね。小豆島に住むことを決めたのも、移住ツアーの3日間でなんとなくいいな、って思っただけですし。自然がたくさんあるとか、小豆島の人が優しかったとか、そんなことで決めました」

「八倉巻さんは、お水みたいな人だったなぁ」帰りの船の中から瀬戸内海を眺めつつ、ふとそんなことを思った。シンプルに、柔らかく、キラキラと。下手な理屈をこねるよりも、自分から湧き出る感覚を大切にした方が、人生うまく回るのかもしれない。なんかここ好きだなーー。私達にはそれで十分なんだ…そう思えたからか、行きの船に乗っていた時より少しだけ心が軽やかになっていた。

この記事を書いたヒト

岡安 早和(おかやす さわ)さん
大学卒業後、企業の法務部にて勤務し、転勤族の夫との結婚を機にライターに転身。「とらわれない働き方や人生を伝える」をモットーに取材を続けている

ヒトコト

人事担当者の永井さんからのヒトコト(ヒトコトとは?

障がい者

雇用数:2人

農園、製造、出荷などの作業系の仕事、コールセンターや店頭での接客、企画やデータ処理をする仕事など幅広い業務がありますので、障害の内容にもよりますが、健常者と変わらない活躍もできる可能性は充分あります。


LGBT

雇用数:0人

基本的には、業務そのものとはまったく無関係だと考えていますが、会社内において配慮が必要な場合は事前に相談いただきたいです(過去このケースは見当たりません)。


外国人

雇用数:2人

中国人(現地大学卒)の新卒入社1名とアルバイト契約でメキシコ人カメラマン。ほかに農園の技能実習生としてベトナムから5名受け入れています。日本語の勉強会を週2回実施するなどしていますが、企画職に就く場合は高い日本語力が求められます。


65歳以上

雇用数:3人

60歳以上は再雇用のパート契約という形ですが、これまでの経験・スキルを活かして正社員時と同等の業務に携わっている方もいます。農園等一部の業務では未経験での短期雇用も受けれています。


子育て後の復職者

雇用数:10人

正社員・パート問わず、ここ2年、対象者の育休取得・復帰率は100%となっています。


ブランクからの復職者

雇用数:0人

過去に下記のようなケースの長期離脱は見当たりませんが、病気等からの復帰はもちろん支援していきたいと考えています。


すっかり小豆島のシンボルにもなっている樹齢千年のオリーヴもヘルシーランドが植樹したもの