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「個人で勝つよりもチームで勝つ方が嬉しい」
興栄企画 笹祐輔さん

目次

「え!?草野球ってあんなに球速いん?」「職場」よりも「仕事場」という言葉が似合う場所その言葉、待ってました「ワンマン」と「わんぱく」人ありきさては、あなたも…弱点驚くほど自然で明快強いチームとは、つまりヒトコト求人情報

「え!?草野球ってあんなに球速いん?」

通りすがりに試合を見ていた河川敷のボランティア清掃員さんは、笹(ささ)さんの投球を見て思わず言葉を漏らしていた。快投。細い体をしなるようにして投げるボールは、シューっと音を立てながらキャッチャーのミットに吸い込まれていく。大きな声を出すわけでも、ガッツポーズするわけでもない。エースは淡々と鋭いボールを投げ込んでいた。「右バッターは引っ掛けたらいかんで。ためて逆方向に打とう」ベンチに戻ると、ほとんど一人一人に声をかけている。笹投手でもあり、笹監督でもあるのだ。「ありがとうございました!!!」試合が終わると、笹少年に早変わり。柔らかい表情で仲間とキャッチボールを始めていた。

「みんなで勝つのが好きなんですよ」野球の楽しさを聞いた時、笹さんはこう切り出した。「学生の頃は、自分がピッチャーだったら打たれないと思ってたんです。でも、社会人になって打たれ始めた。一人じゃ勝てんなぁと思いましたし、チームで勝つって難しいなぁと思いました。でも、やっぱり個人で勝った時よりもチームで勝った時の方が嬉しいんですよね」冷静な口調だが、きっとチームで勝った時のことを思い浮かべていたのだろう。生き生きとした目をしながら、どこか楽しそう。“チームで勝つ”野球でも仕事でも、笹さんの真ん中にあるのはこの言葉。シンプルだが、力強い。そして、シンプルだが、難しい。「チームで勝つための方法」や「強い組織論」など、書店を賑わせる多くの書籍が、この言葉の持つ力を表すと同時に、それを実践する難しさを物語っている。それでも目の前で活き活きと話す笹さんの表情からは、苦難の色は感じられない。みんなよりもずっとシンプルに“チームで勝つ”を考え、大切にし、実践してきた笹さん。若干22歳の取材を終えた時には、どんな本を読んだ後よりも、確かで力強い“チームでの勝ち方”を教わっていた。

「職場」よりも「仕事場」という言葉が似合う場所

笹さんが務める興栄企画は、香川県丸亀市に本社を構えるものづくり会社。造船業から始まり、金属加工やプラント工事、建設も行う技術者集団だ。高い鉄加工技術が多くのクライアントに評価され、中四国を中心に県外からの仕事も多い。平成20年に設立してから10年もしないうちに、拠点は7箇所、従業員は56名に増えた。

「ちょっと車とめて、写真撮ってもいいですか」笹さんが勤務する庵治(あじ)工場へ向かう途中、目の前に広がる景色にシャッターを切らざるを得なかった。高松市内から車で20分。こんなに素敵な景色があったことを、恥ずかしながら知らなかった。

ほどなくして、興栄企画の庵治工場が見えてきた。昨年できたという工場は広々。時折「ウィーン」「バチバチ」という金属加工の音が響くこの場所は、「職場」よりも「仕事場」という言葉が似合う。鉄を切る、曲げる、繋げる。技術者たちの一挙手一投足に目を奪われる。子どもの頃、初めて行った社会科見学の時のようなワクワクが、「かっけぇなぁ…」という言葉になって漏れていた。

その言葉、待ってました

鉄鋼課に所属する笹さんは、仮組みという仕事を担当している。図面をもとに基礎的な組み上げを行う工程。クライアントからの要望を、一番最初に形にする大切な仕事だ。「責任もありますけど、やりがいがあって、楽しいですよ」そう話す笹さんと興栄企画との出会いは、専門学校時代のインターンシップ。「インターン中に社長や先輩方とお話させてもらって、『良い人たちやなぁ』と思えたんです。実は、インターンにはもう一社行っていて、どっちにするか迷ってたんです。でも、最後は人間関係がええほうにしようと思ってうちの会社にしました。それが決め手でしたね」働く場所を人で決める。“笹さん、私たち、あなたの価値観にとっても共感します”そう伝えたかったが、私の口から出たのは、あまりの嬉しさにだいぶ野暮ったくなった一言だった。「笹さん、その言葉、待ってました!!!」

「後輩には『うちの会社、人間関係だけはよそに負けんなぁ』って、自慢してるんですよ。笑」会社の人間関係について、笹さんは笑顔で話してくれた。「ここは先輩も気軽に話しかけてくださるし、社長も若いので、話しやすいです。あたふたしてたら『大丈夫かぁ』って、話しかけてもらうことも多いし、ほっとかれない。そういうことがあると、僕からも話しかけやすいですよね」技術者集団の会社だ。さぞかし職人気質で他人を寄せ付けない雰囲気だと思ったが、どうやら違うらしい。社員同士の風通しは良く、お互いによくコミュニケーションを取る。こうした雰囲気にはある秘密があった。「春は…ゴルフしましたね、会社のみなさんと。夏はウェイクボードしたり、バーベキューしたり。色々と会社のイベントがあるんですよ。それが楽しいんですよね」社員同士和気あいあいと仕事するために、日頃の交流は大切。誰もが分かっている事だが、ここまで実践している所は少ないだろう。「あ、年末の餅つきにも呼ばれてますよ。笑」そして、ここまで社員の楽しみの1つになっている所は、もっと少ない。

「ワンマン」と「わんぱく」

「仕事は、できるだけ楽しくやりたいじゃないですか」社員が楽しみにしているイベントを企画している張本人、森山社長に話を伺った。ものづくりが大好きなわんぱく少年を、そのまま大人にしたような人だ。

「社員とはしっかりコミュニケーション取っていきたいんです。そのためにイベントもするし、一緒に飯も食うし、酒も飲む。家族ぐるみで付き合ってますよ」仲間と長く仕事を続けたい。そう考えていた森山さんは、日雇い社員を上手に使って経営する、当時の業界の常識とは真逆の正社員雇用にこだわってきた。創業当時から変わらないこだわり。その一方で、変わってきたこともあるという。「会社を創った頃はね『俺についてこい!』っていうワンマンスタイルでした。でも、それが通用するのは、目の届く範囲の規模までだって気づいたんです。部署が増えて、拠点もだんだん増えていくと、一人の力だけでは難しい。社員のみんなの協力がないと、会社って上手く回っていかないんです。だから、社員とコミュニケーション取りながら、楽しく仕事できる環境づくりを意識するようになりました」一人の力ではなく、みんなで力を合わせて仕事をする。“チームで勝つ”を大切にしている笹さんが、興栄企画に居心地の良さを感じたのは、根っこにある想いが一緒だからだろう。

人ありき

「うちの一番の強みはね、創業メンバーが今も幹部として残ってくれてることなんですよ」高い技術力を差し置いて、会社の一番の強みを「人材」と話す森山さん。11年という経営経験の中で、信頼できる仲間と一緒に仕事をすることの重要性を心得ていた。「僕だけじゃなくて、仲間も一緒に成長してきているので、大事な部分を任せられるんです。やっぱり人間って、一人でなんでもできる人は少ない。極めようと思ったら、一人一業種くらいしかできないです。うちが色んな事業展開ができているのは、ひとえに仲間のおかげ」既存の事業だけに留まらず、常に新しいことにチャレンジしてきた興栄企画。こうした挑戦のスピードは、人材が育ってきたスピードと同じ。人ありきの成長速度だ。

さては、あなたも…

「森山さんならどうにかしてくれる、っていう安心感はありましたね」そう話すのは創業メンバーの一人、木内さん。前職時代は森山さんの後輩として一緒に仕事をしていたが、森山さんが創業する際、思い切って興栄企画に入社することを決めた。「芯があるなぁ、と感じてました。仕事に対する姿勢とか近くで見てたんで、信用はありましたよね。僕も一緒に成長できたらなぁと思って、ついてきたんです」ここにも、人で仕事を決める人が一人。すてきな人の周りには、すてきな人が集まる。若き工場長の言葉には、そうした大切なことを、改めて感じさせてくれる力があった。

根は真面目やし、コツコツとやるタイプです」日頃の笹さんについて、木内さんはこう語ってくれた。「なかなか器用だし、いいやつですよ。探してもなかなかおらんタイプ。根が真面目でコツコツタイプはね、僕が一番好きなタイプなんですよ(笑)教え甲斐がありますし、これからドンドン吸収してもらいたいです」人は自分と似ている人に共感したり、親しみを感じやすいと言われる。“木内さん、さてはあなたも真面目でコツコツタイプですね”

技術者からマネジメントの立場になった木内さんが、日頃気をつけていることは「スタッフの気持ちのケア」。日頃のコミュニケーションを通じて、モチベーションをいかに高めるかを常に考えているという。特に意識して行なっていることは、不満を聞くこと。ここでふと思った疑問を率直にぶつけてみた。“木内さん、スタッフからの不満を聞くって、恐くないですか?”「そりゃ恐いですよ。『うわぁ、聞くんじゃなかったかなぁ』とかもちろん思うことはあります。(笑)でも、それに向き合うっていうのが大切だと思うんで、しっかり一度聞くようにしてます。自分だったら聞いてもらいたいと思いますからね。聞いた以上は改善していかないかん。聞いただけではダメなんでね。上っ面だけだったら限界がありますよ。チームワークが大切ですから」森山さんとの信頼関係があったからこそ、木内さんは興栄企画で働いている。だから信頼関係のために、億劫なこともする。それは木内さんにとって、ごく自然なことだった。

弱点

真面目で、仕事もスポーツもできる。ひねくれ者の私は、好青年すぎる笹さんの弱点をなんとか探そうとしていた。そこで頼ったのが、笹さんと同じ会社の寮に入っている山本さん。“彼の弱点、一つくらいありませんか?”「弱点ねぇ…なんだろうねぇ…。あ、虫が苦手!この前もハチがでたら、わざわざ飯食うてるところに呼びに来てね。『無理っす!無理っす!」って、大慌てでしたよ」全く、しょうがない奴だなぁ…。そんな口調とは裏腹に、楽しそうに目を細める山本さんの顔には“可愛い後輩”と、そう書いてある。

「でもね、仕事は本当に真面目。人によっては『仕事が遅い』って思ってる人もいるかも分からんですけどね。僕はずっと一緒に仕事してるんで、真剣だし、すごい考えてやってるってことが分かるんですよ。だからミスも少ない。やっぱり理解して物を作ってるって感じが伝わります。僕も本気で付き合ってるつもりだし、彼も腹割って話してくれてると思うんで、嬉しいですよね」弱点を聞き出すつもりが、二言目には彼の魅力が口をついた。先ほどまで“後輩思い”と書いてあった山本さんの表情には、いつのまにか“信頼できる仲間との仕事は楽しい”という言葉が並んでいる。

驚くほど自然で明快

「やっぱり将来は、仕事でもマネジメントする側をやってみたいですね」興栄企画では一番後輩の笹さんに、将来の夢を伺った。「木内さんや山本さんたちのようになりたいなぁと思いますね。頭を使って仕事の振り分けを考えたりしていて、すごいなぁと思います。それで会社が回ってますから。将来的には、自分もやってみたいです」自分より仕事ができる先輩がいる職場ならごまんとある。でも、自分の憧れる先輩が身近にいる職場は、案外多くない。「◯◯さんのようになりたい」性格や価値観。仕事よりももっと人間的な魅力の先にある信頼関係なくして、この言葉は出ない。

最後に笹さんに、仕事と野球に共通することを聞いてみた。ほとんど考える間も無く、スッと話し始めた。「意思疎通が必要なところだと思います。自分の思ってることをしっかりと言わな分からんし、上手くいかんですよね。仕事ではまだまだ下っぱなんで、分からんことはすぐに聞くようにしてますし、野球では先輩なんで、逆に後輩の意見をちゃんと聞くように意識してます。共有し合わんかったら、やっていけないですよね。仕事もスポーツも」日頃から自身が実践していること。それを自分の言葉で話すとこれほどまでに明快なメッセージになるのか、と驚くほど、言葉が自然に出てきた。

強いチームとは、つまり

野球のオーダーを組む時。笹さんは選手全員から、自分が監督になったつもりでオーダーを作ってもらうという。選手一人一人から集めたオーダーを参考に、笹さんが最終的に決定する。「あぁ、こいつここ守りたいんやなぁとか、色々気づくことも多いんですよ。僕が思っていないことを書いてくれることもしょっちゅうあります。できるところは尊重しながら、勝つための方法を考えるのが楽しいんですよ」笹さん流の意思疎通。自分の想いを聞いてもらえる選手たちの、モチベーションが上がる様子が目に浮かぶ。

「チームで勝った時の方が嬉しいんですよね」きっと笹さんは、目標が同じ仲間と一緒に何かを達成する瞬間が最高に楽しいんだろう。仕事も同じ。想いを共有できる仲間と、1つのものを創り上げる瞬間がたまらないのだ。終わりに“言い残したことありますか?”と聞くと「うーん…やっぱ人間関係はどこにも負けんと思ってるので、そこは書いておいてください」強いチームとはつまり、こういうことなんだろう。

(2017/11/22 秋吉直樹)

ヒトコト

代表取締役社長の森山さんからのヒトコト

障がい者

ハローワークに障がい者の方向けの求人は出してます。職種が職種なだけに、あんまり重度の人が応募しにくいんだろうなぁとは思いますね。ただ、うちとしては門は開いているんで、障がいの度合いと能力を見て、出来ることならなんでも構いませんよ。身体障がいであれば、設計業務は全く問題なくできる所もあるだろうし、精神障がいについても、単純作業はあるので相談に乗れると思います。実際、養護学校の先生が見に来てくださって、今後の連携は考えている所です。


LGBT

うちとしては全く問題ないですね。一緒に力を発揮してくれるのであれば逆に嬉しいです。


外国人

研修生としてベトナム人が今6人いて、あと2人来るので全部で8人になる予定です。エンジニア採用のベトナム人も2人いて、こちらも2人増えて4人になる予定です。正直、最初は単純作業くらいしかできないのかなぁと思ってた所もあったんですけど、実際に働いてもらうとすごく良く仕事してくれるし、真面目だし。思ってた以上の仕事をしてくれていて嬉しいです。エンジニア採用の方も、非常に意識も高いですし優秀だと感じてます。将来、彼らが本国に帰った時に、何か一緒に事業できたらいいなぁという思いもありますね。


65歳以上

今は5人います。もともと技術を持っている方なので、非常にありがたい存在ですよね。若い人材の育成や技術の伝承もできるので助かってます。今の65歳は元気なので、体が動いているうちは来てくれたらいいなぁとは思っています。


子育て後の復職者

今はいないんですが、相談に乗れると思います。設計できる人が、会社で半分、家で半分仕事をするっていうスタイルでも構わないです。


ブランクからの復職者

働きたいっていう意欲があれば一緒にできると思います。ブランクがあったからダメとは全く思わないですね。会社を転々としてた人を雇用して、うちでしっかり面倒を見て、長く働いてもらっている人も結構多いです。

ヒトコトとは?

株式会社興栄企画


所在地

〒762-0082 香川県丸亀市飯山町川原1838番地(丸亀本社)


募集職種

・船舶外業溶接

・船舶外業鉄工

・船舶配管工

・船舶電装工

・製缶工

CADオペレーター

・建築施工管理

・保守メンテナンス

・営業


雇用形態

正社員


給与

20万円~35万円

※職種、経験に応じて決定します。


福利厚生

健康保険、厚生年金、雇用保険、労災保険


仕事内容 

船舶製造修理:大型商船の外業鉄工・溶接工事をはじめ配管工事、艤装工事、電装工事を行っています。大手造船所の工場設備、動力設備等の維持メンテナンスも行っています。

金属加工:NTC(ターレットパンチプレス)、ベンダーマシンによる精密板金加工をはじめとして、様々な精密板金加工のご要望にお応えしております。各関連会社により機械加工から塗装・メッキなど、一貫生産も可能です

各種プラント工事:各種プラント工事、設備工事及びメンテナンス工事等を行っています。配管工事を中心に、機器据付工事、電装工事、塗装工事に対応しています。

建設業:各種プラント工事、設備工事及びメンテナンス工事等を行っています。配管工事を中心に、機器据付工事、電装工事、塗装工事に対応しています。


勤務地

丸亀本社 〒762-0082 香川県丸亀市飯山町川原1838番地

川原工場 〒762-0082 香川県丸亀市飯山町川原1838番地

東坂元工場 〒762-0081 香川県丸亀市飯山町東坂元3158番地10

多度津事業所 〒764-0017 香川県仲多度郡多度津町西港町1番地1

丸亀事業所 〒763-0061 香川県丸亀市昭和町30

庵治工場 〒761-0130 香川県高松市庵治町1810

徳島事業所 〒770-0024 徳島県徳島市佐古4番町2-11


勤務時間

原則 8:00〜17:00(休憩90分)

※職種により異なる


休日休暇

日・祝 その他、会社カレンダーによる


求める人

未経験でも、物づくりが好きな人


募集期間

随時


採用予定人数

各2名程度


選考プロセス

まずは下のフォームからお問い合わせください➡︎履歴書による書類選考➡︎面接➡︎合否決定


その他

色々な働き方ができます。物づくりが好きな方、ぜひ一度ご相談ください。