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「パパおかえり、今日は何バス乗っとったん?」
ことでんバス 藤本寛さん

【目次】

得意だから青いイルカという安心ハードよりソフト50歳の新人ワンマンだけど、1人じゃないんよプライベートも自慢のパパにヒトコト求人情報

得意だから

「え、休みの日も運転するんですか」休日、家族で出かける時も運転を買って出るという藤本さんに、思わず聞き直していた。普段からことでんバスの運転をされている方だ。「いやぁ、休日くらい運転したくないですよぉ」という答えを、心のどこかで期待していた。けれど、藤本さんの口から出てきた言葉は程遠いものだった。「いや、まぁ、僕の方が道を知ってるし、運転も得意なんで。得意な方がやった方がいいと思ってます。普段よりも小さい車なので、気持ち的にも余裕が出るし、子供とか嫁さんと『ここはこうなんやで』とか『あそこにあんなんあるで』とか話しながら楽しんで運転してますよ」得意だからやる。そのあまりに自然な答えに、野暮な質問をしたな、と少し恥ずかしくなった。「あ、でも、近くまで帰ってきたら運転交代することもありますよ」一言一言を優しく、丁寧に話す藤本さんの表情は、お人柄をそのまま表したような、自然体で飾り気のない笑顔だった。

青いイルカという安心

香川県高松市を歩いていると、青いイルカに度々遭遇する。ことでんグループのマスコット、ことちゃんだ。可愛いフォルムと、なんとも言えない表情が愛くるしい。電車、バス、タクシーなど、様々な交通サービスを展開することでんグループ。グループ全体では100年以上も前から、香川県民の安全な移動を支えている。通勤や通学、買い物など、日頃の移動には欠かせない、まさに香川県民の足を担っている企業だ。

中でも藤本さんが勤めることでんバスは、もっとも地域住民に寄り添いながら成長を遂げてきたサービスと言ってもいい。利用者の細かな要望に耳を傾け、増便や路線の変更を繰り返しながら、地域から信頼されるバス運行を続けてきた。人口減少や高齢化が進む地方において、公共交通の役割はますます大きくなるだろう。それでも、ことでんなら大丈夫。長年この地で信頼と実績を積み重ねてきたことへの安心感からか、青いイルカのバスを見るたびに、どこかホッとする気持ちになれるのは私だけではないだろう。

ハードよりソフト

「送迎バスの運転してる時が一番楽しかったんですよ」前職で介護福祉士の仕事をしていた藤本さんは、自身が転職したきっかけを話してくれた。「デイサービスの送迎や利用者さんの買い物引率、遠足とかも運転してましたね。もともと車の運転も好きだったし、利用者さんから『ありがとう』と言われるのが嬉しくて、自分から運転させてもらってました。あとは、地理も好きで、地名とか道とか覚えるのも得意だったんですよ。どうせなら自分の好きなことを仕事にしたいと思って、この会社に入ったんです。最初は、こんなに乗る人がおるんやなぁって思いましたね。バスってどこも乗る人が減ってるイメージがあったんで、こんなに必要とされてるんやなぁってびっくりしました」好きという感情にしたがって、憧れの仕事についた藤本さん。自分に嘘をつくわけでも、背伸びするわけでもない。好きだったから運転士になったという言葉は、きっと藤本さんの等身大の気持ちだろう。優しい口調の中にも、聞き手の心にストンと入ってくる芯の強さがある。

入社して今年で9年目を迎える藤本さんに、日頃から大切にしていることを伺った。「僕の場合は、運転技術がないので、お客様への心遣いで仕事しようと思ってますね。高齢者とか体の不自由な人もご利用になるんですが、そういう時は前職の経験を活かしながら、気兼ねなくお手伝いしたいと思ってます。それで感謝されるっていうか、『ありがとう』って言ってもらえるのは、嬉しいですよね」運転士にとって大切なことは、ハード面よりもソフト面だと話してくれた。ハード面は運転技術で、ソフト面はお客様への心遣いだそうだ。好きとはいえ、バスの運転は初心者だった藤本さん。それでもご乗車いただいたお客さんには、気持ち良くバスを利用してもらいたいと、挨拶や丁寧な声かけなど、親身になって行うことを心がけた。そうした毎日の積み重ねの上に、運転士としての8年間の経験がある。ベテラン運転士が数多く活躍するバス業界において、8年と言う数字は、まだまだこれからという数字だ。しかし、藤本さんは運転士としての功績を評価され、難易度の高い貸切バスの運転を任されている。貸切バス担当者の中では、最も若いそうだ。ハード面を補うために、ソフト面を大切にしていた藤本さん。気がついたら、ハード面でも、お客さんから信頼される運転士になっていた。

50歳の新人

藤本さんの心遣いは、お客さんだけでなく、一緒に働く社員にもしっかりと届いている。「ゴミ捨てとか、みんながやりたがらない仕事でも、かんちゃんは率先してできる人ですね」寛(ひろし)の漢字からとったあだ名で、藤本さんのことを親しげに話すのは、同じく運転士の坂口さんだ。「欠員があった時のために待機する日ってのがあるんですが、そういう日に、かんちゃんは次の日のために地図を広げて道を調べたり、先輩に道を確認したり、きちっと準備してるんですよ。それでいて、実際に出動の機会があると、『僕行ってきます』って率先して名乗り出ますからね。責任感が強いんですよ。普段は見た目通り、地味な人なんだけどね。笑」仕事でも、プライベートでも藤本さんと親しくしているという坂口さんは、日頃のやりとりを思い出してか、楽しげに、そして、どこか誇らしげに、かんちゃんのことを紹介してくれた。

坂口さんには藤本さんのほかにもう一つ、会社の自慢があった。社員同士の繋がりから生まれる、働きやすさだ。「部長とか課長とか、上司の人も気さくに話しかけてくれるんです。『なんかあったら言ってこいよ』と。なかなかこんなに大きな会社で、気さくに話しかけてくれる会社はないですよね。お昼も一緒に食べることもあるし、冗談も言ってくれます。やっぱり繋がりいうんですかね。社員同士とか、上司とか。そういうんがあると、働きやすいですよね。自分一人では仕事はできませんから」坂口さんは7年前、50歳の時に転職した。50代でこれまでと違う環境での仕事をスタートさせるのは、並大抵のことではないだろう。それでも、目の前にいる笑顔の坂口さんは、そんなことを微塵も感じさせない。「愛社精神っていうですかね。そこは誰にも負けない気で働いてますね」さっきより少し大きな声で、そう話してくれた坂口さんは、むしろ、今の働き方を心から楽しんでいるように見えた。

ワンマンだけど、1人じゃないんよ

「喋りはそんなに得意ではないと思うんですよ。私なんかと話すときも緊張気味だったりしますから。(笑)それでも話し出すと、ニコッとして話しますし、藤本さんは優しい運転士だと思います」運転士が所属する、運輸サービス部長の木村さんだ。坂口さんの言う、気さくに話しかけてくれる上司の1人。「お客さんにも親しみやすい、接しやすい、と感じていただけてる運転士だと思いますよ。普段はおとなしいんですが、仕事はきちっとしてくれてますね。業務に不備がないように、徹底的に下調べをしたり、率先して身の回りのことをやったり、先輩や後輩に声かけて自分の経験を伝えたりしてますね。これから期待するホープなので、みんなを引っ張っていってほしいです」下調べやゴミ捨てなど、ともすると評価されにくい作業に違いない。それでも藤本さんのそれはきちんと上司に届き、しっかりと評価されていた。これも風通しの良い組織の賜物なのだろう。「ことでんバスの運転士は、みんな純粋で、真っ直ぐ前を向いて取組んでいる運転士ばかりです」業績やサービス内容ではなく、真っ先に社員の人間性を誇らしげに話してくださった部長の姿は、日頃のコミュニケーションによる互いの信頼関係を映し出しているようだ。

「バスの運転って、ワンマンなんですけど、実はみんな繋がってるんですよ」木村さんは、日頃大事にしていることについて、こう切り出した。「実際に運転は1人で行いますが、運転士同士で1つのバスを引き継ぎながら行うんです。そういう意味においても、運転士同士の連携はとても大切です。新人教習でもよく言うんですよ『運転する時は1人やけど、絶対みんな繋がってるんや。だから分からないことがあれば、先輩に相談しながら運転しなさい』って」走っている時は1人だけど、肩にかかっている襷にはみんなの想いが詰まってる。箱根駅伝でよく聞くフレーズは、毎年使われるほど、駅伝の本質をよく表しているんだろう。木村さんの言葉にも、それに近い感覚を覚えた。1人ではなく、みんなで運転している。地域住民の足を担っている会社の、誇りにも近い文化が宿った言葉だ。

プライベートも

社員同士の連携を大切にしていることでんバスの文化は、入社して間もない社員にもしっかりと浸透している。「大型バスに乗ってみると、やっぱり普通の車とは全然違うんです。ブレーキの感覚とか、アクセルの加速具合とか全然違うので、最初は戸惑いましたね。今は慣れて、運転を楽しめてます。いろんな種類のバスが運転できるんですよ。古い、マニアが好きそうなものから、最新のものまで。日頃楽しみながら運転してます」そう言って初々しく笑うのは、入社2年目の長尾さん。大型バス運転に必要な免許の取得費用を、会社が負担する制度を活用して運転士になった1人だ。長尾さんにことでんバスに入社して良かったことを聞くと、返ってきた答えは、やはり社員の人柄に関することだった。「みんなが優しんですよ。自分がミスした時に相談に乗ってくれたりとか、プライベートなことも相談に乗ってくれるんですよ。自分に彼女ができたんですけど、どうしたらええかとか先輩に聞いてました(笑)。そんなことも話せるような社員が多いので、会社の雰囲気は結構好きです」先輩後輩に関わらず、お互いに教え合う雰囲気に助けられることも多かったと話す長尾さん。彼女ができたから楽しそう…ではなく、楽しそうに働く姿が魅力的だったから彼女ができたんだろうなぁ。終始ニコニコしながら会社のことを話す長尾さんを見て、そんなことを考えていた。

自慢のパパに

事前準備を徹底的にする藤本さんでも、出先で道に不安を覚えることがあるそうだ。そんな時、藤本さんはあることを心に決めている。「お客さんが不安に思うから、お客さんの前では地図を見るなっていう人も、中にはいるんですけどね。でも、僕はお客さんの前でも地図は見るし、分からんことは聞いたりします。やっぱり目的地に行けないことが一番迷惑かかることなんで。そこにたどり着くためだったら、多少かっこ悪くても、正直に対応しますね。目的地にお連れできんかったら、なんぼええかっこしても意味がないですからね」正直な対応。またも自然に、さらっと出てきた言葉だった。自分を大きく見せたり、肩肘を張ることもしない。飾らないお人柄そのままだ。

「家に帰ると、駐車場の音で分かるんでしょうね。玄関まで迎えにきてくれるんですよ」2歳と4歳、2人の子どもの話になった時、優しい表情がもう一段階、とろっと優しくなった。「『パパおかえり、今日は何バス乗っとったん?』って、聞いてきてくれるので、子どもからは一応好かれとんかなぁとは思いますね」乗り物が大好きだという子どもたちからすると、バス運転士のパパは憧れの存在だろう。お休みの時には、一緒にお話しながらお出かけに連れていってくれる、家族の運転手にもなってくれるなら尚更だ。そして、子どもたちがもう少し大きくなると、パパの「人」としての魅力にどんどん気がつくのだろう。自然体で、飾らない。そして、だからこそ、多くのお客さんや社員から慕われている。そんな藤本さんは、2人にとって自慢のパパになるに違いない。少し謙遜気味に、「一応」と言って細めた目元は、すごく幸せそうだった。

(2017/8/17 秋吉直樹)

ヒトコト

代表取締役社長の真鍋さんからのヒトコト

障がい者

歓迎します。様々な仕事が社内にありますので、障害の内容によって、どのような働き方ができるのか検討します。


LGBT

歓迎します。グループでハラスメント防止の窓口を設けており、個別の性的志向に合わせたサポートをしていきます。


外国人

歓迎します。公共交通は外国人のお客さまも多くご利用いただきます。当社でも様々なバックグラウンドをもった社員が増えると、多様なお客さまへのサービスを向上させられると思います。


65歳以上

歓迎します。体力や労働意欲により、現在は24名に在籍していただいてます。また、短時間労働など自身にあった働き方に見直しも可能です。


子育て後の復職者

歓迎します。育児の事情にあわせた勤務時間、勤務体系を相談しながら考えていきます。


ブランクからの復職者

歓迎します。養成運転士など、新しい技術を身に着けていく支援をしていきます。

ヒトコトとは?

ことでんバス株式会社


所在地

〒760-0065 香川県高松市朝日町4丁目1番63号


募集職種

・バス運転士

・養成運転士(大型自動車二種免許養成費用を会社が負担)


雇用形態

契約社員(正社員登用制度あり)


給与

平均月額 25万円~32万円

本給18万円+時間外手当等

1回昇給あり


福利厚生

各種社会保険完備・退職金制度あり

住宅補助制度(当社基準による)

自己啓発褒賞金制度


仕事内容 

当初、高松市内の路線バス(中型バス)の運転から始まり、空港リムジンバス(大型バス)や観光バスなどの運転を行う。


勤務地

高松市内 他


勤務時間

系統勤務による


休日休暇

4週6休


求める人

男女を問わず元気な方(女性運転士在籍中)


募集期間

採用予定人数に達するまで


採用予定人数

10名程度


選考プロセス

まずは下のフォームからお問い合わせください➡︎履歴書による書類選考➡︎採用試験(適性検査・作文・面接・実技試験)➡︎合否決定まで1週間ほど


その他

平日のみ1日当たり3時間程度の勤務で、自分の時間を有効活用しませんか。(短時間勤務・時間は相談応)